[ザ・プロジェクト]

“100年データベース”にXMLを採用、仮想化でOSサポート切れを乗り切る─戸田建設

2009年11月13日(金)川上 潤司(IT Leaders編集部)

「過去の実績や履歴といった“動かない”データは厄介だ。どんどん増えるが、捨てられない。システム移行時の足かせにもなる」。戸田建設の佐藤郁氏は言う。同社はXML技術を用いて、そんな足かせからシステムを解放した。 聞き手は本誌編集長・田口 潤 Photo:陶山 勉

佐藤 郁 氏
佐藤 郁 氏
戸田建設 アーバンルネッサンス部 技術チーム 主管
橋梁やダムなどの工事現場を歴任した後、土木設計や指紋認証、GISといったシステム開発・構築などに従事。現在は土木技術の開発のかたわら、システム開発も手がけている。工学博士、技術士(建設部門、情報工学部門)

 

八森 眞治 氏

 

八森 眞治 氏
伊藤忠テクノソリューションズ 科学システム事業部 社会基盤ソリューション部 都市情報課 担当課長
1980年、センチュリリサーチセンタ(現・伊藤忠テクノソリューションズ)に入社。技術系システム開発を経て、1998年から建設会社向けのWeb- DBシステムの開発を担当。今回のプロジェクトでは、仮想化のほか全体の調整役を務めた

 

猪内 誠司 氏

 

猪内 誠司 氏
ジャストシステム エンタープライズ事業部 ビジネスパートナー営業部 アライアンスグループ 副部長
1991年にジャストシステム入社。営業部門に配属、一太郎や花子などのコンシューマ向け製品を担当後、ConceptBaseを中心とする企業向けシステムを担当。現在、販売パートナーとのアライアンス業務に携わっている

 

大野 絵里砂 氏

 

大野 絵里砂 氏
インフォマティクス 開発部 WEBソリューショングループ リーダー
販促関係のデザイナーとしてインフォマティクスに入社。ビューロチームを経験後、開発部門に配属。CADやGISシステムの開発を手がけ、2004年からはWebシステムの開発に従事。現在は、主に自治体案件を担当している

 

─ 100年使えるデータベースがあると聞きました。

 

佐藤: はい。Chronosと呼んでいます。

—ギリシャ神話の「時間の神」ですね。

佐藤: 工事実績や設計図や施工図、予算など当社が保持する膨大なデータを、ユーザーがブラウザから検索できるシステムの総称です。

─ それにしても100年って、大げさな気もしますが?

佐藤: 土木構造物の耐用年数を考えると、建築業者はそのくらいの期間はデータを保持する必要があるんです。実際、100年前に完成したダムは今も現役で使われているんですよ。

─ 建造物だとそうなるんですね。

佐藤: ええ、必然です。我々が今、作っている建造物も、これから100年使い続けられる可能性がある。

─ 建造物が現役で使われている限り、データは残しておくべきだ、と。

佐藤: 設計図や施工図などのデータは改修時だけでなく、その建造物が役割を終えて壊す段階にも役立ちます。詳細な構造が分かっているかどうかで、壊し方が違ってくるんですよ。

─ なるほど。Chronos以前にも、そういうデータを蓄積する仕組みは当然あったんですよね。

佐藤: ええ。Chronosの中核となるのは、1998年に稼働させた工事実績管理システムです。当時としては珍しいWebアプリケーションで実装したんですよ。

─ 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC:当時はセンチュリリサーチセンタ)が開発を担当したんですか?

八森: はい。Visual BASICやCを組み合わせて作りましたが、そのころはまだ.NETのような標準技術はなかったので、試行錯誤をしましたね。

佐藤: 最初はデータを管理するだけだったのを、2000年には地図上に表示できるようにしました。

─ グーグルMapsみたいに?

佐藤: 性能は別ですけど、インフォマティクスのGISシステム「GeonoSIS」と、データベースを連携させたんです。物件ごとの緯度や経度のほか、地図情報もデータベース化しています。

─ 地図情報を、どんなふうにデータベース化するんですか?大野さん。

大野: BLOB(Binary Large OBject)というデータ型を使って、地図データをバイナリ形式で登録できるんですよ。

─ なるほど。それで、Chronosに何か問題が?

再リースは麻薬
ハードの鮮度を保ちたい

佐藤: 2002年、システムのOSであるNT4.0を搭載したハードの出荷が終了してしまったんですよ。使っていたハードのリース契約は2003年までだったので、頭を抱えました。OSを変えようとすると、アプリケーションの変更を強いられますからね。

─ 多くのユーザー企業から同じ悩みを聞きます。

佐藤: NT4.0が動くハードを必死で探しました。ようやく見つけたのが、IBM製のマシン。最後のNT4.0対応機でした。

─ そのIBM機に、従来システムをそのまま載せ替えて事なきを得た?

佐藤: なんとか。でも、5年後に再びリース切れを迎えることは分かっていた。その後、どうするかが問題でした。

─ 再リースという手は?

佐藤: 再リースはある意味、“麻薬”ですから、それだけは避けたかったんです。というのも同じマシンを再リースすると、費用はざっくり言って10分の1になります。

─ それは喜ばしいことでは。

佐藤: 一時的にはね。でも、いったん費用を圧縮してしまうと、翌年からの予算がつかなくなる。ハードの買い換えが必要になったとき、いきなり「これまでの10倍の予算が必要です」と言ってもなかなか通らないでしょう?

─ 確かに。

佐藤: それに、ハードはある程度、新しい状態にしておかなければなりません。古いハードを使い続けていると、故障時に必要な部品在庫がなくなるリスクが出てきますから。

─ とはいえ、望むOSを搭載したハードはもう入手できない。

佐藤: まさに、「ああ無情」ですよ。

─ 嘆いてばかりもいられない。どうしました?

佐藤: 潔く最新のOSにして、データベースも最新のバージョンに入れ替えようと決意しました。

●Next:Oracle 8を最新版にコンバートできなかった

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