米国に赴任して間もなく、コミュニケーションの壁に突き当たりました。チームを率いるリーダーは、私と米国人社員の2人。メンバーは全員米国人ですから、何かあるとやはり米国人リーダーのところに相談に行く。私はカヤの外だったわけです。
エリヤフ・ゴールドラット 著
三本木 亮 訳
ISBN:978-4478420454
ダイヤモンド社
1680円
米国に赴任して間もなく、コミュニケーションの壁に突き当たりました。チームを率いるリーダーは、私と米国人社員の2人。メンバーは全員米国人ですから、何かあるとやはり米国人リーダーのところに相談に行く。私はカヤの外だったわけです。
そんな状態が2〜3カ月続いたころかな。「このままではいけない」と思い、ある行動をとりました。ノートPCを抱えて米国人リーダーの部屋に行き、「私は今日からここで仕事する」と宣言したんです。それからずっと、私の仕事場はその部屋。そのうち、そこに出入りするメンバーたちも私に一目置くようになりました。米国人リーダーは、今では最高の友人です。
その米国人リーダーに薦められたのが、『Flight of the Buffalo』。バッファローの群れと雁の群れを例に、組織のあり方を説いた良書です。
バッファローの群れは、1頭の強力なリーダーが率いています。リーダーが死ぬと、ほかのバッファローたちはその場を動けなくなってしまう。なぜなら、指示がないから。一方、雁の群れはV字編隊を組んで飛びますが、V字の要となって先頭を飛ぶリーダーは1羽ではない。みんなでリーダー役を交代しながら1つの目的地を目指します。
メンバーがリーダーの指示をひたすら待つバッファロー型の組織は弱い。雁の群れのように、組織内で目標を共有するとともに1人ひとりがリーダーシップを発揮できる組織を目指すべき。そんな著者の主張に共感しました。
米国での主な業務だったERP導入は、苦労の連続でした。なにしろ、ピーク時400人の大プロジェクト。1日の遅れが2000万円の損失を生みます。強烈なプレッシャーで、プロマネ関連書籍を読みあさりました。
形式的で当たり前のことが書いてある本が多いなか、「これはすごい」と思ったのが『クリティカル・チェーン』です。同じ著者の『ザ・ゴール』がおもしろかったので購入したんですが、読んでみて驚いた。まさにそのとき私が頭を抱えていた問題を取り上げていたんです。実際、同書に書かれている策を実践したところ、大きな効果が挙がりました
プロジェクト中は、早朝から深夜まで仕事漬け。夢の中でもプロジェクトをうまく進めるアイデアを考えていました。そんな多忙なときほど、本を読みたくなる。一種の現実逃避ですね。それも明るい話がいい。日常があまりにもつらいから(笑)。好んで読んだ作家は、ジェフリー・アーチャーです。読者を飽きさせないストーリー展開の妙には、何度読んでも感心します。
プロジェクトに限らず仕事の仕方のベースになっている1冊を挙げるなら、『リエンジニアリング革命』です。実は、十数年前にこの本を初めて読んだときはあまりピンと来なかったんですよ。しかし最近、「個別最適は必ずしも全体最適につながらない」「過去の成功体験を捨てよ」といった同書の中の言葉を折に触れて思い出すようになった。「ああ、このことを言っていたんだ」と、業務経験を積んだ今だからこそ腑に落ちることが多々あります。
- James A. Belasco
- Ralph C. Stayer
- ISBN:978-0446670081
- Grand Central Publishing
- 1557円(参考価格)
- マイケル・ハマー、ジェイムズ・チャンピー 著、野中郁次郎 訳
- ISBN:978-4532142537
- 日本経済新聞社
- 2039円
- 石野 普之 いしの ひろゆき
- 1984年、リコーに入社。99年まで主に社内の設計支援システムの企画、開発運用に携わる。2000〜2008年、米国統括販売会社における基幹システムの企画・開発・運用を担当したほか、業務改革の推進をリードした。2009年1月に帰国後は、グローバルITガバナンスとIT戦略を担当している
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