開業後3年目のネット専業銀行である住信SBIネット銀行。今、開業前に暫定的に構築したデータウェアハウス(DWH)の再構築とBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの導入に取り組んでいる。口座開設までの顧客の行動履歴などすべてのデータを自在に分析可能にし、サービスを高度化するのが目標だ。(聞き手は本誌編集長・田口 潤 Photo:陶山 勉)
- 木村美礼氏
- 住信SBIネット銀行 システム第2部長
- 1999年9月、イートレード証券(現・SBI証券)に入社。システム企画・開発担当を経て、2006年4月にSBI住信ネット銀行設立準備調査会社(現・住信SBIネット銀行)に出向し、フロントシステムを中心にシステム開発プロジェクトをけん引している
- 河口貴史氏
- 住信SBIネット銀行 企画部 マネージャー
- 2006年11月、住友信託銀行に入社して確定拠出年金業務を担当する。住信SBIネット銀行が事業拡大および業務効率化を推進するのに伴い、2009年6月に同社に出向。企画部にて業務の効率化のほか、データウエアハウスの強化に携わっている
──データウェアハウス(DWH)の再構築に取り組んでいるそうですね。まずは、DWHを導入した経緯から聞かせてください。
木村: 当社は2007年9月に開業したネット専業銀行です。現在のDWHは、銀行の基幹業務を担う勘定系システムを開発するのと並行して導入しました。目的は、顧客の取引履歴データなどを、すべて保存・参照可能にすることでした。
──開業に先立ってDWHを用意した?
木村: ええ。実はデータを分析・活用するというより、コンプライアンス(法令順守)の観点で導入しました。法定帳票や経理関連の帳票作成に必要なデータを格納する「ハコ」としての意味合いが強かったんですよ(笑)。当時は、ともかく勘定系システムを計画通りに稼働させることが優先でした。それに比べればDWHの優先度は低く、何でもいいから用意しておく必要はある、といった位置づけでした。
──勘定系には日本IBMの銀行システム製品「NEFSS(ネフィス)」を利用していますね。DWHも同じIBMのものを?
木村: いいえ。アジアパシフィックシステム総研の「entrance DWH」を使っています。ただ正直にいえば、積極的に選んだわけではなくて、日本IBMに任せたら、そうなったというのが本当のところです。NEFSSのデータを1日に1回、夜間バッチ処理でentrance DWHに取り込む仕組みになっています。
──ネット銀行ですから、当然、24時間オンラインを止められませんよね。それでもバッチ処理ですか。
木村: 実際にはバックアップシステムに格納した午前0時時点のNEFSSのデータを、夜間バッチでDWHに収集しています。ですからオンラインへの影響はありません。
ユーザー部門のニーズがヒアリングで浮かび上がる
──なるほど。それで今、DWHを再構築しようとしているのは、どんな理由からですか。例えば、ユーザー部門から使い方に関して色々と具体的な要望が出てきた?
木村: 要望が「出てきた」というより、潜在的なニーズが浮かび上がってきたと考えていただくのが正確かも知れません。ネット専業銀行ゆえ、顧客との窓口になるのは、Web画面であることはお分かりいただけますよね?
──ええ、もちろん。
木村: そのため、サービスに直結するWeb画面など取引システムの機能強化や見直しを求める声は、色々と上がってきます。ところが社内向けのDWHについては、明確な要望がシステム部門に寄せられるケースは、ほとんどありませんでした。
河口: そんな状況の中で、開業後3年目を迎える前に、業務を効率化しようと考えたのがきっかけです。半年ほど前にユーザー部門にヒアリングを実施したのですが、「DWHからデータをダウンロードするのに時間がかかる」「ローン申し込みのデータは取れないのか」といった声が出てきたのです。
木村: (もともとデータを格納するハコの位置づけだったので)ヒアリングの結果を聞いたとき、「時間がかかるほどのデータをDWHからダウンロードして、現場は何をしているの?」と思いました。
──でもユーザー部門はそれぞれの目的に応じて、DWH上の取引履歴データなどを活用するわけですよね?
木村: もちろんそうです。つまりDWHからAccessやExcelにデータを取り込んで、集計したり業務報告書を作成したりしていました。問題だったのは、例えば開業時から直近まで約2年分のデータを一括ダウンロードしていたことです。それは時間がかかりますよ。
──大量のデータをダウンロードすれば社内ネットワークの負荷も大きくなる。システム担当の木村さんとしては、頻繁にやってほしくない使い方ですね。
木村: まあ(笑)。開業当初は、データ量が少ないから2、3分でダウンロードできるし、ネットワーク負荷の面でも問題にはならなかったと思います。しかし3期目に近づく頃には、口座数も取引件数も増える。加えて、次々に新しい商品を提供しているので、業務報告書に用いるデータの種類も多岐にわたるようになりました。
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