仕事柄、取材や記者説明会の内容を録音する機会がけっこうとあります。話の中に出てきた売上高や販売数といったセンシティブな数値を確認するのが主な用途ですが、時には、要人のインタビューや座談会などを原稿に仕上げるために、全体を聞き直しながらテキスト化することもあります。いわゆる「テープ起こし」という作業です。
1989年、社会人デビューして初めて買った録音機がマイクロカセットレコーダー。記者という仕事に不慣れだった当時は取材テープに頼りきりです。
時間のかかる聞き直し作業を少しでも短縮しようと、ついにはトランスクライバーも購入しました。ちなみに、トランスクライバーとはテープ起こし専用の再生機のこと。再生や停止、早送り/巻き戻しなどをフットペダルで操作しつつ、ヘッドホンで音声を聴くのです。足で制御して手で打ち込むというスタイルは、慣れると思いのほか効率的でした。
時を経た今、機材はICレコーダーに変わりました。録音したMP3ファイルをPCに移した後、これをいかに効率よく“ファイル起こし”するか…。Windows Media Playerなど一般的な再生ソフトの場合、いちいちマウスで停止/再生を繰り返すのはもどかし過ぎます。
かくいう私が愛用しているのが「okoshiyasu2」というフリーソフト。再生/停止などを好みのキーに割り当てることができ、エディタソフトで文字入力しながら自在にコントロールできる優れものです。しかも、ちょいとハンダごてを握れば、楽器用のフットスイッチを使ったコントローラも自作でき、往年の「手足連動スタイル」が再現できるのです。
実は、「Express Scribe」(海外製)、「VoiceWriting」(ボイススピリッツ)といった専用ソフトにも関心を抱いているのですが、どれも仕事のやり方を根本から変えるものではなく導入には至っていません。どうせなら、耳で聞いて手で文字入力するという“A/D変換”をITが代替してくれないものか…。
そんな話も絵空事ではありません。ここのところiPhoneでGoogle音声検索を試してみて、その過程における音声から文字への変換精度がなかなかのものだと実感しました。「一青窈」「Ubuntu」「釈迦如来曼荼羅」など、ちょっと難しそうな言葉を発しても一発で変換。一昔前の音声認識技術とは隔世の感があります。
こうした動きを見る限り、肉声からダイレクトに文字変換して記録するテキストレコーダーなるものがお目見えする日もそう遠くないかもしれません。もちろん私は即ゲットします。
[修正履歴]写真/画面、リンクなどの情報を追加しました(2010/02/16 17:00)
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