[株価から見るIT企業の強みと弱み]

ネットマークス関連事業やホスティング/SaaS事業の強化が業績拡大の鍵を握る[日本ユニシス 証券コード8056]

2010年3月24日(水)長橋 賢吾(フューチャーブリッジパートナーズ 代表取締役)

2009年6月に更新した年初来高値892円をピークに、2月3日には終値591円まで値を落とすなど、日本ユニシスの株価が冴えない。一方で同社はクラウド・コンピューティング関連で収益を期待できる“クラウド銘柄”として、市場の期待は高い。今後、同社の株価はどう推移するか、事業内容を踏まえながら、迫ってみよう。

顧客基盤と信頼感が強み

日本ユニシスと聞くと、情報サービス企業というイメージはあるものの、実際に何を取り扱っているか、なかなか想像しにくいのではないだろうか。09年3月期のセグメント別売上高構成は、システム開発やアウトソーシングなどのサービスの売上構成比率が75.7%、メインフレーム・オープン系のソフトウェア販売が10.4%、ハードウェア販売が13.9%となっている。同社を情報サービス企業と見れば、売上高における製品販売比率が約25%と高いのが特徴だ(図1)。

図1 日本ユニシス連結売上高構成(単位:%)
図1 日本ユニシス連結売上高構成(単位:%)

これは同社の元々の出自が、メインフレームを製造・販売していた日本ユニバックとバローズが1988年に合併して誕生したコンピュータメーカーであることに起因する。特に日本ユニバックは日本企業がコンピュータを導入し始めた1950年代から、東京証券取引所や野村証券、東京電力など大手企業にコンピュータを提供してきた。日本ユニシスはその顧客基盤を受け継ぎ、現在も金融、官公庁、製造、流通を中心に幅広い顧客層を抱える(図2)、この顧客基盤の強固さ、そしてメインフレームで培った信頼性の高いシステム構築が同社の強みと言える。

図2 日本ユニシス連結業種別売上高構成(単位:%)
図2 日本ユニシス連結業種別売上高構成(単位:%)

SaaSなどICTサービスを強化

だがその強みによって今後とも安定した収益をあげられるとは限らない。実際に売上高製品比率(ハードウェアとソフトウェアの合計)は、05年3月期の42.6%から今期(10年3月期)には21.5%まで低下する見通し。その背景には、クラウドに代表される企業のIT資産の持たざる化、オープンサーバーに代表されるハードウェア単価の下落などがあり、製品販売をめぐる環境は厳しい。

さらにメインフレームを顧客に貸し出し、レンタル収入を得るコンピュータ賃貸収入は売上総利益率70%程度という高採算性事業だが、同事業の売上高も05年3月期146.7憶円から09年3月期94.1憶円まで減少。製品販売をカバーする“次の成長戦略”が問われている。

次の成長戦略として、同社が掲げる主要な取り組みは3つある。まず(1)ネットワークインテグレータであるネットマークスの買収によるネットワーク事業の強化。次に(2)地銀向け勘定システムパッケージである「Bank Vision」を中核とした地銀アウトソーシング事業であるS-BITS事業の強化。そして(3)ホスティング・SaaSを核としたICTサービス事業の展開だ。製品販売に代わるこの3つの成長戦略を、どう強化できるか、これが同社の今後の業績あるいは株価を占う上でカギとなろう。

日本ユニシスの業績動向

これを踏まえて、同社の業績を考えてみよう。2010年3月期においては、3つの成長戦略の進捗は道半ばという見方ができる。

まず、(1)ネットマークスに関しては、兄弟会社ユニアデックスとの保守・事業所統合などによるコスト削減は進んでいるものの、ネットワーク機器販売が低調。10年3月期第3四半期決算で、会社計画を売上高300億円→248億円、営業利益5億円→△8億円と大幅に下方修正した。

(2)のS-BITS事業も、現時点で稼働しているのは地銀3行(百五銀行、十八銀行、筑邦銀行)にとどまり、今期業績への寄与は限定的だ。(3)のICT新サービスについては、ICTサービス基盤開発部を新設し、280名体制で、ホスティング・SaaS案件の取り込みを目指す。だが同事業の売上高は20億円未満と、同社の全売上高の1%以下にとどまる。

一方で企業のIT投資抑制の影響を受けて、今期の既存ビジネスは落ち込む見通しだ。特に採算性を重視した製品販売では、ソフトウェアが前年同期比△16.5%の269億円、ハードウェアは同△27.9%の310億円を予想する。サービスについても、アウトソーシングは堅調(同+17.3% 306億円を予想)だが、システム構築(同△11%、850億円)やネットマークスサービス(同△40.2%、230億円)は軟調だ。

結果として、筆者は売上高を会社計画(2700億円)なみの2690億円と予想。営業利益も、会社計画並みの69億円(前年同期比△60.7%)を予想する。利益面では強化しているコスト削減が寄与するが、売上減による落ち込みを避けられない。

来期はどうか。景気は落ち着きを取り戻しつつあるものの、製品販売が大きく戻る可能性は低く、ハードウェアが315億円(前年同期比+1.6%)、ソフトウェアは270億円(同+0.4%)を予想する。サービスについて、ネットマークスは引き続き今期と同水準(225億円)を見込むが、S-BITS事業での地銀3行の新規稼働、ICTサービス事業の拡大(10年3月期売上高予想30億円→11年3月期90億円)でサービス分野の伸長(売上高2215億円、同+4.7%)を予想。これに伴い、営業利益は前年同期比+61%の101億円を予想する。今期がボトムで、来期には回復の兆しが見えるはずだ。

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