[河原潤のITストリーム]

ビジネスプロセス革新への道のり(前編:国内では渋滞中):第12回

2010年3月31日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

ガートナー ジャパンは先ごろ、Gartner EXP部門がワールドワイドで実施した年次IT投資動向調査「Gartner EXP Worldwide Survey」における結果の概要を、日本のCIOやITマネジャーの回答傾向への分析を加えたうえで発表しました。2009年10月から12月にかけて世界41カ国の企業・政府・公共機関に属するCIO約1600名からの回答を得た同調査は、厳しい経済環境の下で経営から任されたIT予算の額や注力したIT戦略、導入検討中の技術などが、国・地域ごとの違いと共に見えてくるような結果が出ています。

 ガートナー ジャパンは先ごろ、Gartner EXP部門がワールドワイドで実施した年次IT投資動向調査「Gartner EXP Worldwide Survey」における結果の概要を、日本のCIOやITマネジャーの回答傾向への分析を加えたうえで発表しました(同社のプレスリリースはこちら)。2009年10月から12月にかけて世界41カ国の企業・政府・公共機関に属するCIO約1,600名からの回答を得た同調査は、厳しい経済環境の下で経営から任されたIT予算の額や注力したIT戦略、導入検討中の技術などが、国・地域ごとの違いと共に見えてくるような結果が出ています。

 このリリースには、世界全体と日本とで回答傾向に違いが見られる項目がいくつか挙げられていますが、その中で特に気になったのが、ビジネスプロセスに対する意識の差です。「ビジネスプロセスを改善する」という課題のビジネス上の優先度が、全体結果では6年連続で1位であるのに対し、日本だけで見ると2年連続で4位という結果にとどまっているのです(ちなみに、日本の優先度1位は「企業コストを削減する」で、これは全体では2位になっています)。

 さて、この優先度の開きはどこからきているのでしょうか。この機会に、今回と次回の2回にわたって、国内企業におけるビジネスプロセスあるいはBPM(Business Process Management)への取り組みについて、少し掘り下げて考えてみることにします。

 まずはガートナー ジャパンによる分析から。ビジネスプロセスの改善についての優先度の開きは、世界と日本とで顕著な「(IT戦略の)方向性の違い」によるものであると同社は説明しています。その違いとは、世界の先進企業がすでに効率化重視の姿勢から脱却し、新規IT投資による生産性向上への姿勢へと方向性を大きく修正しているのに対し、日本企業の大半はいまだ効率化重視の姿勢にある、というものです(注:同社がここで言う生産性とは「一定のリソースからより大きなアウトプットを取り出そうとするマネジメント」を指しています)。

 ただし、ビジネスプロセスの改善を最優先課題ととらえる世界的な機運は、生産性向上への注力のみで高まったものではないと思われます。生産性向上へと方向転換する前にとられた効率化(コスト削減)重視の姿勢は、主として、2008年頃から始まった世界的な景気後退局面から強いられたものだと考えられますが、ガートナーの調査で優先度1位を続けたこの6年間には、各国の企業が効率化重視の姿勢を強いられた時期も含まれるからです。

 ともかく調査結果から見てとれるのは、「世界の先進企業は、数年来ビジネスプロセスの改善を最優先課題とし、効率化重視姿勢の方向にあった時期にもそのスタンスを貫いてきた」ということです。そうなると、この課題に実際に取り組んだか否かの実施状況に至っては、世界と日本とで調査結果が示した以上の差がついていることが容易に想像できます。

 実際、ビジネスプロセスへの取り組みが国内企業において滞っていることは、別の調査結果から明らかです。ITRが国内企業を対象に実施している「IT投資動向調査」の結果の年次推移を眺めると、ビジネスプロセスの可視化・最適化が毎年、重要度の高い課題として挙げられながらも、実施率が一向に上がっていかないという実態が浮かび上がってきます。

 このように、ビジネスプロセス革新への道のりは「国内では渋滞中、ノロノロ運転」といった状況なのですが、このテーマに正面から立ち向かい、成果を上げている日本企業も、少数派ながらもちろん存在します。次回では、ビジネスプロセスへの取り組みに際してのハードルについて考えたのち、国内の先進企業がハードルをどのように乗り越えていったのかを紹介したいと思います。

ビジネスプロセス革新への道のり(後編:渋滞原因と解消への糸口):第13回に続く)

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