2000年5月創業のゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は、インターネットでゴルフ用品の販売やゴルフ場予約サイトを運営する伸び盛りの企業だ。同社は2010年1月の稼働を目指し、会計システムにSAP ERPを導入する計画を進めている。その背景や狙いを聞いた。 聞き手は本誌編集長・田口 潤 Photo:陶山 勉
- 大日 健 氏
- ゴルフダイジェスト・オンライン 上級執行役員・コーポレートユニット担当 兼 システム戦略担当(CIO)
- 1993年、日経BP社入社。アドマーケティングセールスや社内のWebインフラ整備、オペレーションの確立、メールを利用したダイレクトマーケティングの立ち上げなどを手がける。2003年4月、シーネットネットワークスジャパンの立ち上げに参画。営業商品開発とメディア開発を担当し、2005年1月には代表取締役社長に就任。2008年3月、ゴルフダイジェスト・オンライン入社。システム部門担当執行役員、COOを経て、2010年1月に上級執行役員 CIOに就任
- 志賀 智之 氏
- ゴルフダイジェスト・オンライン IT戦略室 室長
- 1993年、SRAに入社しプログラミング業務に従事。その後、独立してフリーランスの立場で雑誌編集、WEB開発、CD-ROM開発、DTPシステム構築などに携わった。1996年から、ソフマップにおいて雑誌立ち上げやECサイト刷新、新規事業立ち上げを経験。海外流浪を経て2006年にネットイヤーグループに入社。WEBサイト再構築プロジェクトを率いた。ゴルフダイジェスト・オンラインには2009年8月に入社。現在、G10プロジェクトのPM、PMOを務めている
─会計システムの再構築に着手したそうですね。
大日:志賀が率いるIT戦略室を中心に、昨年から取り組んでいます。
─2000年の創業から10年という節目を迎えるから?
大日:そういうわけではありません。従来のシステムに、明らかに限界が来ていたんです。会社を立ち上げたときから使い続けてきた会計ソフトは小規模向けなので、事業の急拡大に機能が追いついていなかった。
志賀:それが業務効率を低下させる要因になっていました。
─具体的には。
志賀:受注から在庫引き当て、出荷指図までは各システム間をデータが自動で流れる仕組みでした。ところが、それをそのまま会計システムに登録できなかった。
─それでどうやって日々の売り上げを立てていたんですか?
志賀:経理担当者が月次で振替伝票を起こし、会計システムに手入力していたというのが実態です。売り上げだけでなく、毎月の経費もね。
─ちょっと言いにくいんですが、それはネット企業らしからぬ、という感じです。
大日:世の中、案外そういうものですよ(笑)。人による作業が介在するため、販売や在庫管理といった業務システム上のデータと、会計データは必ずしも一致しない。どうしても起票ミスは発生しますから。
─データの精度にも問題があった?
志賀:はい。粒度もばらばらでした。膨大な受注データを月次で処理するために、複数の売り上げを1つにまとめて入力することが常態化していたんです。
大日:このため、ヒト・モノ・カネの流れを正確に把握できませんでした。例えば、発注システムに入力した商品を正しく仕入れられているか。それすら確認する術がなかった。詳細な会計情報を開示できないのは、上場企業としていかがなものか。そう指摘する声もありました。
提案から1カ月で9社の提案を徹底比較
─従来の会計システムが抱えていた問題を解決するため、思い切って刷新を決断した。機能強化や改修という手段もあったのでは。
大日:既存システムをエンハンスするにも、それなりのコストがかかる。調査の結果、そうしたコストはシステムを新規導入する費用とあまり変わらないと分かったんですよ。
志賀:そもそも、従来のシステムはこれまでに何度も改修を加えてきた経緯があります。その間、システム担当者の入れ替えが何度かあり、ドキュメントも残っていない。その結果、内部がどうなっているか誰も分からなくなってしまっていた。
─だったらこの際、ゼロから新しいシステムを作ってしまおうと。
大日:そう。スクラッチで作り直したほうが、機能面の自由度が高まるという利点もあります。
─ちなみに従来の会計システムには何を。
大日:パッケージソフトのPCAです。
─120億円を超える売り上げでも、PCAは対応できるんですね。ところで最初からERPパッケージを導入すると決めていたんですか。
大日:手組みは考慮しませんでした。ERPであれば、連結会計やJ-SOXに対応しやすいので、今後のビジネスを考えた場合、必然でした。
─大日さんと志賀さんは、ERPの導入経験があったんですか。
大日:いいえ。2人ともゼロです。そこで、外部のコンサルティング会社、具体的にはアビームコンサルティングに協力してもらうことにしました。
─専門家を交えてプロジェクトが正式にスタートしたのはいつですか。
大日:2009年9月です。まず取り組んだのは、業務の現状分析と課題抽出です。それから実現すべき業務モデルを策定してRFPを作成。11月に入ってから、日本インフォア、ビジネスブレイン太田昭和、オービックなど9社に提案を依頼しました。
志賀:パッケージの種類で言うと、オラクルのJD Edwardsや富士通のGlovia、マイクロソフトのDynamics AXなど7製品。ベンダーの数より少ないのは、異なるベンダーが同じ製品を担いでいるケースがあったからです。
─9ベンダーからの提案を1つひとつ検討するとなると、時間がかかったでしょう。
大日:あえてスピード感を持って臨み、12月にはSAPに決定しました。12月29日に正式契約を交わしたんですよ。提案依頼から、1カ月で選定を終えたことになりますね。
─やることが早い。提案するベンダー側は大変だったのでは(笑)。
志賀:そうですね。RFPを出してから、1週間で提案してもらいましたから。我ながら、ものすごい勢いで事を進めたものです。
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