情報サービス産業には、システムエンジニアやプロジェクトマネージャなどと並んで、ITコンサルタントという職種がある。主にSI企業やITコンサルティング会社に所属し、経営や技術的な観点からユーザー企業の抱える課題を解決する人たちである。高度な方法論や手法と豊富なコンサルティング経験を持つ、頼りになる存在のはずだが、実態はそうとは言い難い。
何よりもコンサル会社自体、玉石混淆であり、個人の能力・資質への依存が極めて高い。筆者は仕事柄、ITコンサルタントという肩書きの方によくお会いするが、話をして信頼を寄せられそうな人は、それほど多くない。
定型の分析やベンチマーキングと称する他企業との比較などは得意だが、一方で事業や業務の理解が浅く、技術知識も表層的でノウハウが感じられない人が多いのだ。特に横文字─ドメイン、スキーム、ソリューション、ケーパビリティ、ミッシーなど─を使う人にその傾向が強い。一言で言えば、現場感や臨場感が伴わないのである。
混乱すると去るのが“コンサル”
ユーザー企業の仲間から聞く評判も、必ずしも芳しくない。彼らはその理由として、料金やアウトプットの不透明性をあげる。「混乱すると去ってしまうのが、IT“コンサル”だ」と体験から揶揄する知人もいた。
筆者はコンサルタントの役割の重要性は理解しているつもりだし、実際に要所で活用してきた。だがコンサルティングの不透明性に関しては、全く同じ意見だ。もっと業務の透明性や対価の透明性を図り、親しみと実効の伴うプロフェッショナルであってほしい。
筆者が考えるITコンサルタントの本来の役割は、問題解決の方針策定のような上流だけではなく、ユーザー企業と一体になって成果の実現までをサポートすることだ。報告書や提案書が成果ではないし、情報システムの構築も目的ではない。ビジネスの変革を支える仕組みを実装し、運用し、効果を発揮することが唯一の成果品である。
複雑になるばかりの情報システム構築を、ユーザーとベンダーの間に入ってファシリテーション(協働促進)していくことも重要な役割である。十分な発注能力を持たない企業は少なくない。そこでコンサルタントは、自らのサービスや製品に誘導しがちなベンダーから顧客を守り、低コストで信頼性の高い情報システムの構築に寄与する必要がある。
運用においても適切なアウトソーシングや情報セキュリティ確保の指導が出来なければならない。結果的に顧客満足度を高められないのなら、ITコンサルタントの役割を果たしたとは言えない。相談のリピートの有無が、コンサルタントの評価尺度の1つと考えていい。
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