世界中の自動車メーカーが改めて、ハイテクの本場であるシリコンバレーに研究開発拠点を開設し、活動を強化している。半導体チップやクリーンエネルギーなどの技術協力体制の確立と、ソフトウェアを中心としたエンジニアの確保が目的だ。
日産自動車の研究開発部隊が2013年、Yahoo!本社に近いオフィスビルに入居した。そこで日産は、自動運転が可能な未来の自動車を開発する計画である。2012 年には、GMとフォードがスタンフォード大学近くのパロアルト市に、トヨタ自動車がマウンテンビュー市に、それぞれ研究開発のためのオフィスを構えている。いずれも、ソフトウェア・エンジニアの獲得が狙いの1つである(図)。
今日の自動車は1台当たり25 ~ 50個のマイクロプロセサを搭載している。高級車になれば、その数は100個に及ぶ。これらのプロセサがエンジンの燃焼や、ハンドルやブレーキの制御、車内の空調、各種メディアの制御などを司っている。昨今のハイブリッド車や電気自動車(EV)ではさらに、電力系の複雑な制御が加わる。それぞれの制御ロジックは、ソフトウェアで開発され、ファームウェアとして組み込まれている。ソフトウェアバグによる誤動作が発見されれば、ファームウェアを更新することになる。
デトロイトではソフト開発できない?
シリコンバレーに最初に研究所を開設した自動車メーカーは、独メルセデスベンツである(表)。1994 年に米国メーカーに先駆けてパロアルト市にオフィスを置いた。1998 年には独BMWがシリコンバレーに小規模なオフィスを開き、2005年にマウンテンビュー市内のビルに移転している。日本のメーカーで先陣を切ったのは04 年にオフィスを開設したホンダである。
最近のシリコンバレーは、自動車産業の中心地だったデトロイト市の衛星都市の観を呈している。シリコンバレーのエンジニアは、いくら優遇すると言われても、気候が厳しく、ましてや財政破綻したデトロイト市に移り住もうとは思わないからだ。その意味で有利なのが、シリコンバレーに本拠を置く新興のEVメーカーのであるテスラ・モーターズである。同社が12 年から販売するモデルSには、ソフトウェアシフトが鮮明に感じられる。
モデルSのダッシュボードには、計器類が一切装備されていない。代わって、計器類を3Dグラフィックスで表示するための画面と、17インチのタッチパネルが配される(写真)。タッチパネルにはNVIDIA 製のTergaビジュアルコンピューティングモジュール(VCM)が搭載されている。VCMは、マルチコアのARMチップと、NVIDIAのGeForceグラフィックプロセサ、そしてオーディオとビデオそれぞれの専用プロセサを内蔵する。
運転手はタッチパネルを介して、車に関するすべての情報(速度、電気量、室内温度、カーナビによる進路など)を得ると同時に、車のすべて(巡航速度や室内温度、ライトやオーディオのオン/オフなど)を制御する。モデルS 登場以降は競合メーカーも、高級車を対象に計器類をパネル表示にしたり、携帯電話連携や音声応答機能を装備したりするモデルを発表している。
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