[金谷敏尊の「ITアナリストの仕事術」]

仕事術No.11「共感されるプレゼンテーション資料」の作り方

2013年11月18日(月)金谷 敏尊(アイ・ティ・アール 取締役/プリンシパルアナリスト)

レポートの執筆とともにアナリストの仕事に多いのが、プレゼンテーションである。イベントでの基調講演、セミナー講師、コンサルティングの報告会など、実に多くのプレゼンテーションの機会がある。世の中にはプレゼンテーションの極意などと銘打ったさまざまな良書・文献があるので、全体像やあるべき論についてはそちらを参照頂きたい。ここでは、プレゼンテーション資料作成のコツについて、筆者の思う所を述べたい。

 プレゼンテーションは、自己の意思を伝えることで他者に気付きを与える場である。単なるスピーチと違うのは、スクリーンに図表などを投影するといった視覚効果を伴う点だ。場合によっては、デモンストレーションを交えたり、モックアップ(試作品)を見せたりするといった演出がなされることもある。

 実際のプレゼンテーションでは、スクリーンに投影したり聴講者に配布するプレゼンテーション資料に合わせて話を進めることとなるので、資料の中味は重要である。一定水準のコンテンツ、表現力、分かり易さが伴っていなければ、訴求するプレゼンテーションになりにくい。

 コンテンツが論理的に構成されていることも大切だ。なんらかの主張や提言を行う際は、統計データ、事例、権威のコメントを引用するなどの根拠を示しておく。この辺りのテクニックは、論文を書く時と同じなので、第08回「読ませる論文の書き方」を参考にして頂きたい。

ストーリーへの共感

 さて、プレゼンテーション資料の作り方について、私見だが、もう一点重視している点がある。それは「ストーリー性」である。そもそも満員御礼のセミナーであっても、開始前から真剣に話を聞こうと身構える人はそう多くはない。さあこれから寝るぞ、という雰囲気を醸し出す人もしばしば見かける(筆者の講演だけかも知れないが…)。来場者の中には、便宜上参加するとか、上司に言われて聴講するといった方もおり、ある程度は止むを得ないところだ。

 だからと言って、プレゼンターは、プロである以上手を抜く訳にはいかない。そんな人にも耳を傾けてもらい、徐々に自説に引き込んでいかねばならない。それには、アイスブレークで冗談を飛ばすとか、冒頭に意表をついたチャートを示すといったテクニックもある。だが、何より効果的なのは、話の流れが一遍の物語やドラマになっていることである。

ストーリーマーケティングという言葉がある。これは、商品、サービス、ブランドなどの性能や機能を訴えるのではなく、体験や世界観といった情緒的な付加価値を訴求するマーケティング手法だ。開発秘話や製造プロセスなどを紹介し、共感を促すことで顧客を引き込む。プレゼンテーションにおいても、淡々とした解説ではなく、物語調で展開したり、エピソードを挿入した方が、共感を得られやすい。

●Next:一流映像プロデューサー、デビッド・アッテンボロー氏の魅せるテクニックに学ぶ

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