コミュニケーション手段として、すっかり定着した電子メール。しかし、それを使うすべをきちんと体系立てて学ぶことは少なく、見よう見まねの結果、生産性を著しく削がれているケースも散見されるようだ。今回は、筆者が実践しているアカウントの使い分けについて紹介しよう。
パソコンが社内ネットワーク(LAN)に繋がりインターネットにも繋がった1990年代半ばから、電子メールは日常的なコミュケーション手段になった。その源流は1960年代と古いが、携帯電話やスマートフォンの普及に伴って廃れるどころか、今ではもっともポピュラーなコミュニケーションツールになっている。
もちろんビジネス活動の上でも欠かせないツールだが、問題もある。社員の多くにパソコンが与えられるようになった頃、企業のパソコン教育はワープロや表計算のソフトが主だった。メールがコミュニケーションの基本でありながら、その教育はおざなりで、きちんとした教育を受けた人が少ないのだ。
メールの教育があれば、ネットワークコミュニケーションにおける作法(ネチケットと呼ばれたこともある)を学べたかもしれない。メールを使いこなすための振り分けや添付、転送などの基本機能から、情報の取り扱い方や整理の仕方を理解できるし、タッチタイピングで効率の良い入力も学べるはずなのだ。つまり情報リテラシーを身に付けるには絶好のツールなのだが、タイトルの付け方にしても、本文の書き方にしても、はたまたCCやBCCの使い方とか同報の仕方にしても、感心しない事例にたくさん遭遇する。
大量のメールに埋もれて重要なメールを見逃したり、メールの処理に業務時間の大半を費やしたり、といったことも、相変わらず起きているのではないか? 見様見真似の使い方が先行し、日常の指導もないためになかなか改善されない現実がある。
メールを用途別に使い分ける
タイトルの付け方などは別の機会に譲るとして、今回は基本的なメールのアカウント(メールを使う権利)について述べよう。筆者は用途によって複数のアカウントを使い分けている。内訳は(1)業務用の自社のメール、(2)事業支援の契約をしている会社の業務用のメール、(3)個人のメールとして広く使うメール、(4)個人のメールだが特定の人としか使わないメール、(5)何かと便利に使えるGoogleのメール(Gmail)、そして(6)スマートフォンのメールである。毎日確認しなければならないので、(1)~(5)もスマートフォンで確認できるようにしている。
こういう仕分けをして使っていると煩雑ではないかと思われがちであるが、実は楽なのだ。受信するメールがあらかじめアカウントでカテゴライズ、つまり仕分けされているからである。名刺を渡すなどしてメールアドレスを公開すると、いろいろな企業やメディアから案内や宣伝のメールが入るようになる。これはこれで役に立つ情報もあり、メールのフォルダーで仕分け整理しておく。これに対し、私的に使っているメールアドレスは一部にしか公開しないから、その類のものは全く入ってこない。
このような使い分けを始めたのは、私的なメールアドレスを海外のサイトに公開したことがきっかけだった。古い話だが、米国の大学への問い合わせや調査に私的なアドレスを使った。すると直後から英文、仏文、露文など猛烈な数のスパムメールが届くようになった。メールアドレスが横流しされているとしか考えられない現象だった。
防衛のための“捨てアド”
スパムに襲われたアカウントは今も使っている。それが7つめのアカウントだ。ネットショッピングをはじめ様々なサービスの会員登録をすれば、すぐスパムメールが増えるのは目に見えている。防衛のためにインターネットに晒し放題のメールアカウントがあった方がいいと考えたのだ。いわゆる”捨てアド(使い捨てメールアドレス)”と呼ばれるものである。
実際、このメールアカウントには、大量のスパムメールが止むことなく入ってくる。困るのは受信サーバーが許容量を超えて必要な通知が届かなくなることだ。捨てアドだが本当に使い捨てることはしないので、使えなくなると問題である。そのため時々受信サーバーの消去作業をしなければならない。
スパムばかりでなく、マルウェア(悪意のあるソフトウェア)の多くがメールを介して侵入してくる。巧妙になった攻撃は防ぎ切れるものでもないが、せめて注意を向けておくアカウントが限られていた方がいい。添付ファイルなどは一切開かない。
スマートフォンのメールアドレスも不必要に公開するとスパムメールに襲われる。攻撃がスマートフォンやタブレットにシフトしているようだ。スマートフォンを乗っ取り、遠隔操作するソフトもメール経由で感染する。メールの使い分けにも、さらなる知恵が必要だ。
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