[市場動向]

「自らの変革を進め、事業をシンクロさせる」─米IBMが戦略説明会で宣言

2014年11月25日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

クラウド分野ではアマゾンやグーグル、マイクロソフトの攻勢、ソフトウェア分野ではオープンソースの伸張を受け、毎年のように売上高を減らすIBM。IAサーバー事業の売却が背景にあるが、どっこい、このまま縮小均衡に陥るわけではなく、次に向けた様々な手を打っている。その1つがITを活用した自らの企業変革である。

Apple、MicrosoftやSAP、Twitterと相次ぎ提携

 とはいえ、こうした話だけなら「今まで散々、モバイルファースト、クラウドファーストと言ってきたのに、そのIBM自身がまだ進行形?」と、皮肉の1つも言いたくなる。だが、IBMは周到に準備をしてきている。様々なIT企業との提携がそのひとつだ。目につくものだけで、下記のようものがある。

  • 2014年7月に米Appleとの提携を発表。IBMが同社勢品を全世界で販売するほか、アプリを開発してIBMのクラドサービス経由でセキュリティなどのサービスを提供する。IBM自身もApple製品を利用する。
  • 同年10月、独SAPがIBMを戦略的パートナーに選んだと発表。SAPの企業ソフトウェア(HANAを含む)を、IBMのクラウド上で全世界40拠点にあるデータセンターから提供する。SAPは米Amazon Web Servicesをパートナーとしてきたが、IBMを上位に位置づける。
  • 10月、米Microsoftと大企業向けのクラウドサービスに関して提携し、両社の企業向けソフトウェアを相互に利用可能にすると発表。例えばDB2やWebSphere、Pure Application Service などをAzureで、Windows ServerやSQL ServerをSoftLayer、Microsoft .NETをBlueMixといった具合にIBM Cloudで稼働可能にする(http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/45196.wss)。
  • 10月、米Twitterと提携して企業がその顧客や市場のトレンドを把握しやすくすると発表。Watson Analyticsを含むIBMの分析ツールとTwitterのデータを統合する。BlueMixでも利用可能にする。開発するTwitterのデータを活かしたアプリを企業に提供する。汎用のアプリだけではなく、顧客毎にユニークなアプリを開発・提供する計画で、すでに50社がテスト中という。

 もちろんIBM独自の取り組みもある。BlueMixは今年商用化したサービスだし、最近では「SmarterPlanet」の成果を活かして、BlueMix上でIoT(Internet of Things)のアプリケーションを数分で構築するツール群を発表。さらに先週19日には企業の電子メールを刷新する「IBM Verse」を発表した(www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/45402.wss)。電子メールや会議、カレンダ、ファイル共有、ビデオチャットなどを、多面的な検索機能の下で1つのコラボレーション環境に統合するのがVerseである。リンダ・サンフォード氏の説明を合わせて考えれば、これらの発表がIBM自身の変革への取り組みと直結することが分かる。

 一方で今年1月にはIAサーバー事業を23億ドルで米レノボに売却すると発表し、この10月には移管の手続きを終えた。それに留まらず、10月には半導体事業を米国の半導体製造企業であるGLOBALFOUNDRIESに売却すると表明。今後10年間、IBMはGLOBALFOUNDRIESからPOWERプロセサの供給を受ける一方で製造からは手を引き、半導体の基礎研究や技術開発に専念する姿勢を明確にした。

 IBMを取り巻く事業環境は急ピッチで変化し、売上高の減少に加えて、株価も今夏の高値である195ドル強から現在は160ドル台へと約20%も下落した。そんな中でIBMは事業のリストラクチャリングを含めて、次に向けた様々な手を打っているのだ(図5)。もちろん、これらが奏功するかどうかは分からないが、ITを活かした企業変革の先進事例の1つとして、IBMの動きに着目する意味はある。2013年の売上高997億ドル(11兆5600億円)、全世界で43万人に従業員を擁する巨大企業が自らの変革に挑む、前例のない取り組みだからである。

図5 IBMの投資戦略の概要
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