いかにしてビジネスにデジタルを取り込み、市場や顧客行動の連続的な変化に対応していくか――最近、半ば定番となったテーマに、シスコシステムズが「Digital Cisco」を宣言して顧客と“シスコ自身”のデジタライゼーションを推進する。2015年7月にジョン・チェンバーズ(John Chambers)氏からCEOを引き継いだチャック・ロビンス氏(Chuck Robbins)が初めてのプレスセッションでIoT時代の戦略とビジョンをつまびらかにした。
地政学的なダイナミクス
チャック・ロビンス氏(Charles H. "Chuck" Robbins)氏(写真1)のCEO就任披露となるプレスセッションは2015年10月5日(米国現地時間)、米カリフォルニア州サンノゼにあるシスコシステムズ本社(写真2)内のコンファレンスルームで行われた。5月4日の次期CEO正式発表から5カ月、同氏は数え切れないほどの顧客やパートナーとの対話を重ねてきたという。
ロビンス氏自身がIT業界に入った1980年代後半、当時の経営者が常に気にしていたのは業界ごとの法規制で、それが自社のビジネスに与える影響を検討するのに多くの時間を費やしていたという。「それが今はどうだろう。ほぼ毎日、ビジネスに影響を与えかねないニュースであふれている。税務、データ統治、顧客情報プライバシーなど我々は地政学的なダイナミクス(Geopolitical Dynamics)の待っただ中にいて、それらは予想もしないかたちで経営に影響を及ぼす」(ロビンス氏)
「25%と75%」のデジタライゼーションへの備え
ビジネスや市場のルールが大きく変わるとき、チャンスを手にしやすいのは独創的なアイデアで突っ走れる新興企業で、巨大な企業はえてして動きがもたつく。ここ数年よく聞く破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)の話だ。この話題で必ずと言ってよいほど例に出されるウーバー(Uber)やエアビーエンビー(Airbnb)の名前をロビンス氏も挙げ、変化のスピードが以前とは劇的に違うこれからの市場で生き残るにはデジタライゼーション(Digitalization)の戦略が欠かせないとして次のように語った。
「顧客企業の25%は、今のデジタライゼーションの動きから起こるさまざまな革命にどう対峙していくかの戦略を立てている。そうした顧客に対しての我々の仕事は、彼らが挑むデジタライゼーションのビジョンを具現化できるような後押しをすればよい。一方で、75%の顧客はいまだ確たるデジタル戦略を定義していない。我々の踏み込んだ助けを必要としており、テクノロジーをもって緊密に支援していく」(図1)
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