IBMのPureApplicationが進化している。垂直統合マシン「PureApplication System」と、クラウドから提供する「PureApplication Service on SoftLayer」に加え、2015年3月にはソフトウェア版としての位置付けで「PureApplication Software」をラインナップに加えた。すでに40カ国で導入され、ユーザー数も毎年倍増しているという。PureApplicationのどこが支持されているのだろうか。来日したPureApplicationの開発責任者であるDanny Mace氏に最新の状況を聞いた。
─PureApplicationのユーザー数が拡大しているということですが、それだけ支持される理由はどこにあるのでしょうか。
2012年のリリース以来、PureApplicationの利用企業数は毎年倍々に増えています。顧客がその価値を実感してくれているからにほかなりません。背景にあるのは、スピードの向上、コストの削減、そしてハイブリッド・クラウドへの対応という昨今のIT戦略に欠くことのできないニーズであり、PureApplicationはそれらに確実に応え得るものなのです。
例えば、米国連邦政府の医療保険制度改革、通称オバマケアの対応で短期間でのシステム構築を余儀なくされたブルーシールド・オブ・カリフォルニアは、PureApplicationによって顧客向けのポータルサイトの開発期間を大幅に短縮するという効果をあげました。
また、IBMでシステムインテグレーションを担当するGlobal Technology Serviceが、ITインフラをPureApplicationに置き換えた10社のライフサイクルコストを評価したところ、2年後には人件費を含めた工数コストを35%から50%も削減できたという結果を得ることができました。
さらにPureApplicationはハイブリッド環境でシームレスにアプリケーションをデプロイできるというメリットも提供します。オーストラリアの銀行ではクラウド上で先行開発したアナリティクスのシステムをわずか一週間でデータセンターに移行して、本番稼働させました。かかったのは発送に3日、データセンターへの設置と設定に2日、そしてアプリケーションの実装とテストに2日間でした。
他にもPureApplicationによってオープンなテクノロジーにエンタープライズ向けの管理機能を付加できる、開発から本番までのライフサイクルをパターンと運用管理機能によって自動化することでリスク回避ができる、といった点からも高い評価を受けています。
PureApplicationのメリットを広げるソフトウェア版の登場
─今年3月には「PureApplication Software」を発表しました。今一度、シリーズ内でのポジションを整理いただけますか?
PureApplicationはテクノロジー面から見ると3つのレイヤーから構成されています。1つ目がサーバーやストレージ、ネットワークを統合し、仮想化されたシステム環境を提供する「IaaS」。2つ目がアプリケーション環境の最適化、システム管理の自動化など、アプリケーションを迅速に立ち上げてライフサイクルで運用管理する「統合管理基盤」。そして3つ目が仮想マシンの作成、ソフトウェアの導入、構成など、システムを自動的に構築するための「パターン」です。
事前に準備されたパターンはIBMやIBMのパートナーのベストプラクティスを反映したもので、現在220以上が提供され、開発キットも用意されています。GUIベースでOSやミドルウェアなどのコンポーネントを選択するといった操作で、簡単にパターンを作成したり、カスタマイズすることができます。
2012年に発表した「PureApplication System」はこの3つのレイヤーすべてを含んだ垂直統合型システムです。そして昨年夏にはIBMのクラウドであるSoftLayer上でPureApplicationを利用できる「PureApplication Service on SoftLayer」を発表しました。これによってITインフラを所有しなくても、PureApplicationのパターンや運用管理機能のメリットを享受できるようになりました。
さらに今年3月に発表した「PureApplication Software」によって、顧客はすでに自社で保有しているインフラ上で統合管理基盤とパターンの上位の2つのレイヤーを活用できるようになっています。
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