[インタビュー]
「今こそ、I=Informationの価値を最大化せよ」、オープンテキストCEOが説くAI本格活用期の情報管理
2025年6月17日(火)森 英信(アンジー 代表取締役)
オープンテキスト(OpenText)は、企業が保有する膨大な情報を効果的に管理・活用・保護するための製品分野であるEIM(企業情報管理)にフォーカスするカナダのソフトウェアベンダーである。同社のCEOでCTOを兼務するマーク・バレンシア(Mark Barrenechea)氏に、メガトレンドであるAIへのスタンスや日本市場の印象、CIOに向けたアドバイスなどを語ってもらった。
サプライチェーンレベルでの情報管理が重要
カナダのオンタリオ州ウォータールーに本拠を置くオープンテキスト(OpenText)は、1991年にウォータールー大学の研究プロジェクトからスピンアウトして設立された。以降、EIM(企業情報管理)分野のグローバルリーダーとして成長を遂げてきた。近年の同社が掲げるのは「Information Reimagined(情報の再構築)」で、深化の著しいAIとデータ主導の意思決定により、より高度な情報管理を実現するビジョンを示している。
それを具現化する製品として、業務の生産性向上を図るAIテクノロジー「Aviator」シリーズや自律的な業務処理を可能にする数多くのAIエージェント、AI駆動のセキュリティプラットフォーム「Cybersecurity Cloud」、サプライチェーンレベルで安全なデータ統合を可能にするマネージドサービス「OpenText B2B Integration Enterprise」などを展開している。オンプレミスと複数のクラウドで構成するハイブリッド/マルチクラウド環境において、企業のセキュアな情報管理と効果的なデータ活用の基盤を担うとしている。
同社 CEO兼CTOのマーク・バレンシア(Mark Barrenechea)氏(写真1)は、企業が自社のビジネスだけでなく、サプライチェーン全体に目を向ける必要があるとし、サプライチェーンレベルの情報管理の重要性を訴えている。

幅広いソリューションを展開するオープンテキストは、B2B(企業間取引)におけるEDI(電子データ交換)やサプライチェーンの最適化を支援するBusiness Network事業において、世界中の企業、金融機関、政府機関に安全なデジタルサプライチェーンとeコマースの基盤を提供している。顧客に、日産自動車や野村證券、カナダロイヤル銀行(RBC)、スイス・ネスレ(Nestlé)、蘭フィリップス(Philips)、仏ロレアル(L’Oréal)などのグローバル大手企業の社名が並ぶ。
バレンシア氏は、現在、顧客企業から求められている要素として3つを挙げる。1つ目は詳細な可視性である。「例えばベトナムで製造された商品が米国のアトランタの倉庫に届くまでの全行程、あるいは自動車メーカーがフランスから調達したタイヤが船のコンテナに積まれている状況まで、エンドツーエンドの可視性を提供することが求められている」(バレンシア氏)。
2つ目はネットワークのセキュリティ、3つ目はマルチクラウドの対応である。これらの要素を満たすのに、企業が複雑性に対処しなくてはならない。バレンシア氏は自動車会社を例にとって説明する。
「1台の車には最大1万の個別部品があり、年間1000万台の車を生産するために、1000億の部品が20カ国から調達される。その可視性と物流管理は、カイゼンやカンバン(注1)などのシステムにおける管理がうまく機能した時には非常に美しいシステムとなる。我々はその一部を支援している」
注1:カイゼンとは、業務プロセスや製品、サービスなどを継続的に改善していく活動。カンバン(かんばん方式)とは、トヨタ自動車が考案・実践する、自動車生産工場の後工程から前工程に「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」指示することで無駄な在庫の発生を抑える手法。日本の製造業発の生産管理方式だが、さまざまな業界で活用が進む。
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