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[インタビュー]

データ駆動経営に必要なアナリティクスプラットフォームの姿とは?

2017年6月8日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

デジタル時代において最重要視する必要のあるITの要素の1つがデータである。では、その蓄積と管理、分析を担うシステム(プラットフォーム)はどうあるべきなのか? 来日した米ガートナーのアナリストに聞いた。

 2016年10月に「企業が最優先で取り組むべき『デジタルビジネス・アーキテクチャー』とは何か?」という記事を掲載した。その中で、企業情報システムは図1に示した5つの要素から構成されるという考え方を示した。

(図1)図1 デジタルビジネス・プラットフォームの全体像。中心に、データ・アナリティクス/プラットフォームが位置する(出展:ガートナー)
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 列挙すると、①バックオフィスなど既存の業務システム群である「Information Systems Platform」、②外部向けのWebサイトやSNSの「Customer Experience Platform」、③物理的な資産やモノを対象にした「IoT Platform」、④API連携で外部の企業やマーケットプレイスとつながる「Ecosystems Platform」、そして⑤すべてのプラットフォームに広がる「Data and Analytics Platform」、である。

 中でも重要なのが⑤Data and Analytics Platform(以下DAPと略す)だろう。①~④のハブに位置しており、業種を問わずどんな企業にも必要。なによりもデータを収集・管理し分析する"司令塔"の役割を担う。いわゆる"データ駆動経営(Data Driven Business)"に欠かせないピースでもある。

 しかしDAPの位置づけは理解できるにしても、DAPがどんなソフトウェアやツールから構成されるのか、どう構築するのかは必ずしも分かりやすくはない。どんな仕組みや機能が必要で、どう構築するといいのか?米Gartnerでアナリティクス領域を担当するカート・シュレーゲル氏(Kurt Schlegel:リサーチ バイス プレジデント)に、この点を聞いた。


ーーData and Analytics Platform(DAP)は具体的にはどんな構成なのでしょう。最近、注目を集めている「データレイク」のことと考えればいいのでしょうか?

 過去20年間を考えると、構造化データを蓄積・分析するデータウェアハウス(DWH)がその役割を担ってきました。様々な情報システムからデータを集めて一元化し、分析するためのプラットフォームです。しかしDWHは構造化されたデータ向け。今日のテキストや画像、音声といった非構造データを含めて様々なデータを扱うには不十分です。

 この点で、確かにデータレイクは有効な解です。Hadoopや(インメモリー処理の)Sparkのようなソフトウェアを使って種類を問わず、ビッグデータを扱えますからね。しかし、これも(DWHと同様に)DAPの重要な要素の1つですが十分ではありません。データの読み出しは得意ですが、書き込みはそうではない。それにDAPではデータを1ヵ所に集めるだけでなく、様々なシステムに散在するデータをコネクトして、必要に応じて分析できるようなことが必要だからです。データの置かれているロケーションはそのままに必要に応じてデータをつなぐ、"データ仮想化"の仕組みもDAPには欠かせないのです。

ーーDWH、Hadoop/Spark、さらにデータ仮想化やETLといった仕組みを、適材適所で組み合わせるのがDAPと考えればいいでしょうか。

 その通りです。実際の取り組みは様々ですし、企業の戦略やすでに運用している情報システムによっても異なりますが、一般にはデータを1ヵ所に集めるアプローチとデータをつなぐアプローチの両方を採用することになります。同時にアナリティックスの機能や仕組みが入ってくることに注意して下さい。機械学習を初めとするAIが典型例ですね。

--どんなステップでDAPを構築するといいのでしょう。

 その質問に答えるために、ベンダーやツールの話は後にして、まずは企業がどのようにデジタルビジネス戦略を推進し、そしてデジタルトランスフォーメーションを実践するのかを説明しましょう。我々は5つのステップがあると考えています。多くの企業は「バイモーダルIT」でいうモード1の業務システムを数多く構築・運用しています。顧客エンゲージやIoTなどモード2のシステムはまだ構築に取りかかった段階です。(バイモーダルITについての詳細は2016年5月10日のインタビュー参照)

 DAPの視点から言えば、この段階で顧客や取引先、サプライヤーに対してデータを透明にする、彼らがデータにアクセスできる環境を提供していくことが重要です。言い換えればファイアウォールの外側に対してデータを開示できる体制を整備するわけです。こういう動きは以前から着実に進んでいて、特に進んでいる業種は小売業。有名な例では米ウォルマートが運用するRetail Linkがあります。納入先やメーカー、その先のサプライヤーに有用な販売データを開示しています。製造業も含めて、このようなデータの外部化がデジタルビジネスの第一歩です。

ーー社内で分析/活用するだけではなく、データを社外に提供するのですか?

 データの鮮度や精度、粒度などを整えないと、社外に提供しても使ってもらえません。このことは社内利用でも非常に重要になります。セキュリティも高めなければなりません。何よりもモード2のシステムでは双方向のデータのやりとりを通じてエンゲージメントを強化する必要があります。そのためにはまず自らがデータを透明にすることが大事でしょう。

--なるほど。では第2歩以降は?

 第2は仲介者としての立場を生かすことです。ウォルマートのような小売業を例にすると、サプライヤーと消費者の仲介者としてデータを通じたエコシステムを形成していくのです。ここまではまだモード1の延長線上と言えますが、第3のステップは、顧客の体験をデータを使ってパーソナル化する点でモード2そのものです。

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