NTT東日本の千葉事業部は2019年5月28日、千葉市の税業務に対して、AI-OCRによる実帳票の読取精度と、AI-OCRとRPA(ロボットによる業務自動化)を組み合わせた業務効率化の効果を検証したと発表した。帳票の読取精度は、手書き帳票が多い個人住民税で94.82%を達成した。時間削減効果は、個人住民税で年間約602時間の削減効果を得られた。
NTT東日本の千葉事業部は、AI-OCRとRPAを組み合わせることで、紙の帳票を用いた業務をどれだけ効率化できるのかを実証した。AI-OCRの読取精度を調べるとともに、AI-OCRとRPAの組み合わせによって帳票1枚あたりの処理時間がどれだけ削減できるのかを調べた(図1)。
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対象の帳票として、個人住民税の帳票「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」(年間約5万5000件)と、法人住民税の帳票「確定・中間申告書」(年間約2万7000件)を選択した。AI-OCRソフトは「DXSuite」、RPAソフトは「WinActor」を使って検証した。
現状の業務フローは、(1)申請書受領、(2)押印、(3)内容確認、(4)システム投入、(5)確認・補正、(6)保管、で構成している。実証では、このうち(3)内容確認と(4)システム投入の2つの工程をAI-OCRとRPAに置き換えた。申請書をAI-OCRで読み取り、RPAでシステムに投入した。
AI-OCRの読取精度を検証する方法として、読み取りをした総文字数に対して、職員が補正した文字数をカウントし、総文字数に対して補正を行わなかった文字数の割合を読取精度として算出した。この結果、総文字数に対しては96.26%の読取精度となった。活字帳票である法人住民税は98.32%、手書き記入かつ住所などの自由記入欄が多い個人住民税の帳票においても94.82%の精度を確認できた。
削減時間を検証する方法として、手入力でのシステム投入時間と、AI-OCR/RPAでのシステム投入時間を計測し、帳票1枚あたりの平均時間を年間処理時間に換算した。結果、個人住民税では年間で約602時間の削減効果を得られた。一方、法人住民税では、申請内容の補正が必要となる場合があり、今回の実証実験ではRPAのシナリオに反映するところまで至らなかった。
なお、今回の実証では業務フローの一部に限定的にAI-OCR/RPAを導入したが、今後、業務フローの見直しとともに、適用業務を拡大する。