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[ユーザー事例]

データ起点でムダとスリム化の根拠を抽出─トヨタシステムズのデータ駆動型カイゼン

2020年3月17日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)

トヨタシステムズは、数百あるという老朽システムのスリム化にデータ起点のアプローチで取り組んでいる。データモデリングおよびデータプロファイリングで既存システムのムダとその根拠を抽出、ユーザーの同意を得たうえで効率的にシステム改修を進めることができているという。2020年3月5日、一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)主催の「データマネジメント2020」のセッションに登壇したトヨタシステムズ 情報管理本部 設計管理IT部 工程・用品グループ ゼネラルマネージャの小野里樹氏が取り組みを解説した。

数百システムの老朽更新に膨大なコスト

 トヨタシステムズは、トヨタ自動車の基幹系システムを担当していたトヨタコミュニケーションシステム、ネットワークを担当していたトヨタデジタルクルーズ、グループ会社のシステムを担当していたトヨタケーラムの3社を統合し、2019年1月に設立。トヨタグループのIT戦略全般を担っている。

写真1:トヨタシステムズ 設計管理IT部 工程・用品グループ GMの小野里樹氏

 同社 製品情報管理本部 設計管理IT部 工程・用品グループ ゼネラルマネージャの小野里樹氏(写真1)が取り組んだのが、システムのスリム化である。トヨタには、大小合わせて数百の老朽システムがあった。そのスリム化にかかるコストが大きな問題となっていたという。

 例えば、各システムを10年のサイクルで更改するとなると、1年間で数十のシステムを更改しなければならない。「1つのシステムの更改コストを平均10億円とすると、年間数百億円かかる計算となる。コネクティッドカーや自動運転など新たな分野に投資が必要な状況の中で、このコストは明らかに問題である」(小野氏)

 長年の更改によりアプリケーションの規模は拡大傾向にある。一方で、業務の変化に伴い現在はほとんど使われなくなった機能もあるはずなのだが、削除されることはほとんどない。これまで更改の際、有識者が不在などの理由で仕様が不明瞭なため、とりあえず現行踏襲されることが多かったのだという。

 なかでも小野氏が一番の課題と考えていたのが「造り過ぎのムダ」。なぜそう考えたかは「トヨタだから」という。

 トヨタ生産方式では、「ムダ」を「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義している。「造り過ぎ」「手持ち」「運搬」「加工」「在庫」「動作」「不良を造る」という7つのムダがあり、なかでも「造り過ぎのムダ」は残り6つのムダを生む要因ともなっているため、最大のムダと定義されているのだという(図1)。小野氏は、同じことが情報システムについても当てはまると考え、造り過ぎのムダを一番のカイゼン対象とすることにした。

図1:トヨタ生産方式における7つのムダ(出典:トヨタシステムズ)
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スリム化の根拠をユーザーに示す

 従来であれば、ムダな機能を削る「機能を起点としたスリム化」を行うところであるが、機能からアプローチすると、根拠が薄いままスリム化を進めることになる。そうなると業務障害を恐れ、抜本的なスリム化に踏み込むことができない。

 そこで小野氏が着目したのが「データを起点としたスリム化」。システムデータとは、ユーザーのシステム作業証跡である。そこを起点にしてデータ分析を行うことで、ユーザーを説得するだけの、スリム化の根拠を持つことができる。

 ムダとその根拠を抽出するために具体的に行ったのが、データモデリングとデータプロファイリングという2つのデータアプローチだ(図2)。

図2:2つのデータアプローチ(出典:トヨタシステムズ)
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データモデリング

 システム改修を行う際、コストを抑制するためにシステムのデータ構造は変更せず、処理の変更のみで対応することがある。そのため業務とシステムのデータ構造にギャップが潜在しているという。

 ユーザーが普段目にしている現状の画面、帳票を分析し、あるべきデータ構造をモデリングした。システムで保有しているデータの構造と比較、検証することでギャップを明らかにし、そこからシステムの課題を抽出できるのではないかと考えた。これがデータモデリングのアプローチだ。

データプロファイリング

 現在システムが保有しているデータベースの中身を可視化し分析することで、業務の改修や廃棄の検討につなげるのがデータプロファイリングのアプローチだ。具体的には、定義ナッシング、定義アンマッチ、定義アンユース、ダブルミーニング、イリーガル定義、仕様アンマッチ、不要データという7つの観点で分析を進めた(図3)。

図3:データプロファイリング、7つの分析観点
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 このうち定義アンユースは、機能が定義されているが、該当データが0件または極少件数のもの。つまりほとんど使われていない機能のことだ。例えば、各機能の利用率を算出したところ、7つの機能のうち上位2機能で全体の96.6%を占めた。利用率の低い5つの機能が定義アンユースに当てはまる。この5つの機能についてユーザーにほとんど使われていないことを説明、簡素な代替機能にするか、あるいは廃止するか決めたという。

 はじめの4カ月間は、具体的な作業プロセスを作成し作業にかかる工数、費用を算出し、このアプローチに効果があるのかを検証するために費やしたトライアルの期間。一定の効果が出せそうと見込まれたことから、6カ月間にわたり無駄とその根拠を抽出する作業を行った。

 データモデリングのアプローチで900のエンティティ(システム、サービス)に、データプロファイリングのアプローチで1600項目の機能について取り組んだ結果、計598個の検討課題を抽出することができた。最終的にシステム全体で約45%、260万ステップのプログラムコードの削減を図ることができたという(図4)。

図4:現行とスリム化後のシステム規模比較(出典:トヨタシステムズ)
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●Next:どの部分から新規開発を始めるべきか?

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