[調査・レポート]

IT支出からも欧米企業のクラウドシフトが鮮明に─State of Tech Spend 2020解説[後編]

グローバルIT支出調査「State of Tech Spend Report 2020 from Flexera」

2020年5月21日(木)西浦 詳二(SoftwareOne Japan シニア・ダイレクター/@ShojiNishiura)

「State of Tech Spend Report 2020」は今回が初回調査となる、米フレクセラのグローバルIT支出調査レポートである。前編で、欧米企業を中心としたグローバルのIT支出動向について全体の俯瞰から「攻めのIT」への投資、分散するIT調達などの観点で、分析を交えて確認してきた。後編では、ここ数年で世界的な潮流となっているクラウドファースト/クラウド移行への投資、主要な支出先ベンダーなどについて見ていく。

●前編はこちら欧米の大企業で「攻めのIT」投資が加速─State of Tech Spend 2020解説[前編]

 前編の最後の項目で、パブリッククラウドとSaaSに対する支出に関して、きちんと管理されていると答えた回答企業は少ないことがわかった。だが、パブリッククラウドとSaaSの支出カテゴリーが増加し続けていることと合わせると、ここの課題解決の重要性が高まることが予想される。

 図1を見ると、オンプレミスソフトウェアのコストが22%、SaaS/IaaS/PaaSを合わせたクラウドサービスのコストが25%となっており、その他は通信、ハードウェア、施設などにかかるコストだ。

図1:IT支出のカテゴリー別割合(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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 図2はIaaS/PaaS、SaaS、オンプレミスソフトウェアのそれぞれのカテゴリーの今後の支出見通しだ。明らかに IaaS、PaaSとSaaS への移行が見てとれる。クラウド系サービスは共に80%以上が増加を見込んでいるのに対し、減少はわずか数%だ。オンプレミスソフトウェアに関しては55%が大幅、あるいは小幅な減少を見込んでいるのに対し、増加は23%とクラウドサービスとは対照的だ。オンプレミスからクラウドへの移行、クラウドセントリックなどはよく言われており驚くことではないが、今回の調査でも裏づけられた結果となった。

図2:IT支出先の変化(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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データセンター集約/クラウド移行が着実に進む

 データセンターの利用状況はどうだろうか。図3を見ると、3つから5つのデータセンターを自社保有あるいは商用データセンターをコロケーションで利用しているという回答が最も多く33%、次いで1つから2つが25%となっている。また、40%以上は6つ以上のデータセンターを利用している。

図3:データセンター利用数(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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 データセンターの保有や利用に関しては業種、地域性、システムの性格など、さまざまな要因から影響を受けるため、今回得られた数値だけで何かがわかるというものではないが、図4の今後のデータセンター利用予定と合わせて見ると興味深い。65%がデータセンター数の減少を予定・計画し、増加は7%。データセンターの集約の取り組みが現れたかたちだが、この傾向はオンプレミスからクラウドへの移行も一定程度影響していると考えて間違いないだろう。図5には、クラウド(現行)、クラウド移行計画中、そしてオンプレミスというワークロードの比率を示している。

図4:データセンター利用数の傾向(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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図5:ワークロードの場所別分布(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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 継続的な調査による時系列での変化や、他の統計や情報との突合、フォーカスを絞った詳細な調査などにより、その実態が明らかになっていくだろう。データセンター集約やクラウド移行の動きには今後も注視していきたい。

ソフトウェアの利用とベンダーへの支出の関係

 ソフトウェア/アプリケーションの利用やベンダーへの支出についても調査を行っている。図6は、回答者が頻繁に利用する/適度に利用すると答えたソフトウェアベンダーのグラフだ。マイクロソフト(Microsoft)がトップであることはだれでも想像がつくところだが、2位以下にヴイエムウェア(VMware)、SAPと続くのは、IT部門がメイン対象であることからうなずける結果となった。なお、北米と欧州を中心とした調査のため、日本のベンダーは回答に上がらなかった。

図6:ソフトウェアベンダー別の利用状況(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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 図7は、ソフトウェアベンダーについて利用の増減予定を尋ねた結果だ。AWS(Amazon Web Services)、マイクロソフト、ServiceNow、セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)など、大手クラウドベンダーは増加予定が減少予定を大きく上回った。

 一方で、同じ大手でもオラクル(Oracle)、IBMなどのいわばクラウド後発組の苦戦が見られる。IBMの場合、レッドハット(Red Hat)買収・統合のシナジーや、HCL Technologiesへの一部ソフトウェア事業・製品の売却などの影響が今回の調査結果にどのぐらい反映されているのかはわからない。また、SAPも、いわゆる「SAP2025年問題」がS/4HANAへの移行期限2年延長で「2027年問題」になったことの影響についても同様で、今後の動きを注視する必要があろう。

図7:ソフトウェアベンダー別の支出増減動向(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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 図8は、自社におけるソフトウェアベンダーの支出上位3社を挙げた結果をまとめたものだ。単価の差などの理由により、よく利用するベンダーと支出上位の顔ぶれにはギャップがあることがわかる。コスト最適化に取り組むなら、支出上位のベンダーが優先対象となるだろう。

図8:ソフトウェアベンダー支出上位3社の回答結果(出典:State of Tech Spend Report 2020)
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●Next:欧米企業におけるIT組織・人材への支出/投資動向は?

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