「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、生活協同組合コープさっぽろ CIO 長谷川秀樹氏によるオピニオンである。
縁あって筆者は、2020年2月からコープさっぽろのCIOを務めることになった。このデジタル化の時代、新任のCIOとして何をやるかを記してみたい。最初にするのは当然、以下のようなことの理解である。
●システムの費用(取引先別、勘定科目別、システム別など)の理解
●システム一覧とその概要の理解
●ネットワーク概要
●セキュリティー概要
●デバイス(PC、サーバー)概要
●事業の主軸
●業務課題
●組織図とキーパーソン
どれ1つとっても楽ではないが、これらはやるしかない。問題は実際の仕事にあたって、どこから、何から手をつけるのか、である。実は、インフラから手をつけると筆者は決めている。そうではなく、インフラを適当にして、業務アプリで効果があるところだけ手をつける人もいるかもしれない。短期的には喜ばれるからだが、少々、乱暴に言えば、それは粉飾決算的で感心しないやり方だと筆者は思う。
「インフラはインターネットテクノロジーのみ利用せよ」
ではインフラを、どうするのか。これはもう明解で、「インターネットテクノロジーのみ利用せよ」である。インターネット上で稼働するサービスは今後も増え続けるだろう。企業向けも同様であり、使わない手はない。何より、個人のスマホからでも銀行振り込みができる今の時代において、企業だからといって専用線やVPNじゃないと稼働しないシステムにこだわる必要はあるのか? いや、必要ない。
インターネットテクノロジーにインフラを振り向けるのは、宗教を変えるのと同じくらいのインパクトがあり、既存の情報システム部やSIerとも苦笑いをするだろう。しかしユーザーサイドやお客様は、何とも思わない。むしろ「インターネット上でできることが自社では何でできないのだろう?」と、不満を持っているはずだ。情報システム部は、そんなユーザー部門よりも先んじてなくてはいけないし、足枷になってもいけない。
それに今はインターネット上にいっぱい勉強できる素材があり、何と言っても、「実際に体験できる」のだ。例えば、会計システムのことはfreeeやマネーフォワードを無料プランで使って勉強すればいい。そうすれば、よく分からないExcelフォーマットで請求書を作り、メール送信や印刷して郵送をしているのが、ばかばかしくなる。やってみると分かることだ。そういうfreeeなどを使ったことがある人からすると、自社の請求書の出し方は、何これ美味しいの? なのである。
●Next:コープさっぽろで導入した技術、撤廃した技術
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