[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

温室効果ガス削減で拡大するITの役割

出光興産 情報システム部 部長 久保知裕氏

2021年6月10日(木)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、出光興産 情報システム部 部長の久保知裕氏によるオピニオンである。

 コラム執筆の機会をいただき、ありがとうございます。筆者はエネルギー関連企業でIT統括の仕事をしています。今回の内容については、筆者の私見であることをご了承ください。

 さて、温室効果ガス削減は、喫緊の課題として取り組まなくてはならない大きなテーマです。単純に減らせば済むわけではなく、エネルギー問題と直結するため経済面への配慮が不可避という難しい課題もあります。そのため技術面や経済面でさまざまな手法が検討、提案されていますが、ここではITの側面から徒然に考えてみました。

 まず、温室効果ガスについて改めて整理しましょう。CO2やメタンなど温室効果ガスは、もともと大気に含まれており、大気が暖かい状態で保たれるのに役立っています。ところがそれらの量が増えることで宇宙に放出されるはずの熱(赤外線)が大気中に留まり、気温上昇を招いてさまざまな環境問題を引き起こしています。

 1997年、この問題に対応するために京都で開催された国際会議でいわゆる「京都議定書」が採択され、各国が定量的目標を定めて温室効果ガスを削減することが決まりました。その後は欧州・北米といった先進国と、中国や途上国の立場の違いもあり、順調に進捗しているわけではありません。しかしどの国・地域においても重要であることは事実であり、日本では2021年、菅首相が2050年の脱炭素や2030年には対2013年比で46%削減を宣言しています。

 温室効果ガスは牛のゲップなどにも含まれますが、多くは化石燃料などが燃焼する際に発生します。化石燃料はエンジンやボイラーのように直接燃焼させることでエネルギーを生み出すとともに、発電のために利用されます。すなわち、排出量の抑制や排出ゼロを目指すと、エネルギー消費を抑制することにつながり、電力や石油、ガス、鉄鋼、輸送など燃料を大量に消費する産業の競争力に影響します。「あちらを立てればこちらが立たず」になるのです。

カーボンプライシングと現状の課題

 このような矛盾を解消し、温室効果ガス削減と経済成長のバランスを取るために、通常の省エネはもちろん、CO2を排出しない再生可能エネルギーなど技術開発の促進が行われています。太陽光や風力による発電がその例です。同時に温室効果ガスの排出を抑えるための経済的手法として、カーボンプライシング(Carbon Pricing:炭素の価格づけ)が利用されています(図1)。

図1:カーボンプライシングの枠組み(出典:経済産業省、日本エネルギー研究所「第4回 世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」2021年4月)
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 カーボンプライシングは大きく炭素税と排出権取引に分けられます。炭素税は、道路財に使われる源揮発油税と同様のアプローチです。化石燃料などに課税して使用を抑制したり、税収を環境負荷軽減に使います。もう1つの排出権取引は、事前に国や企業で決めた温室効果ガスの枠に対して、削減幅が大きく余った国や企業と削減幅が小さく足りなくなった国や企業の間で取引を行うものです。

 「対〇年比〇%、○○万トン」などと記される排出権の割当や取引の方法については、キャップ&トレード(Cap&Trade)とベースライン&クレジット(Baseline&Credit)が知られており、キャップ&トレードにはさらに、グランドファザリング(Grandfathering)、オークション、ベンチマーキングといった取引方式があります。

 一方で、国別割り当ての公平性、カーボンリーケージ(Carbon Leakage:国内でCO2削減を推進した結果、以外の地域で逆にCO2排出量が増加してしまう現象)などの課題も残り、世界的な取引市場の整備は今なお途上です。

排出権取引におけるITの役割は大きくなる

 ここで、温室効果ガス削減の取り組みを、ITの側面から考えてみたいと思います。最近、米国の有力EVメーカー、テスラ(Tesla)が「仮想通貨のマイニングに電力を消費しすぎるので、ビットコインの利用を廃止した」とのニュースがありました。これが示すように、コンピュータが大量のデータを高速に処理することは大量のエネルギーを消費するに直結し、特にデータセンターはその代表格と言われています。

温室効果ガス削減に向けて、ITの活用がますます期待されている

●Next:ERPの管理リソース「ヒト・モノ・カネ・情報」に「排出権」が加わる?

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