[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

今さら聞けないクラウドの本質と活用のポイント

PwCコンサルティング テクノロジーコンサルティング パートナー 中山裕之氏

2021年11月10日(水)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、PwCコンサルティング テクノロジーコンサルティング パートナー 中山裕之氏によるオピニオンである。

 「クラウドとは何か?」と聞かれて「サーバーをレンタルするようなもので、従来のハードウェアに代わる単なるITインフラ」と回答する人がまだまだ多いのではないだろうか。実際のところ、筆者も数年前までそう思っていた。ところがその本質を見ていくと、私の認識が間違っていたと言わざるをえないことに気づいたのである。

ユニコーン企業誕生を支えたクラウドコンピューティング

 ここ10年で、多くのスタートアップ企業が従来にないスピードでビジネスを拡大し、ユニコーン(図1)と呼ばれるデジタル企業に成長していった。背景として、クラウドの存在が不可欠であったことが窺える。クラウドの最大の特徴は、インターネットにさえ接続していれば、必要な時に、必要な場所で、必要なだけのITリソースを瞬時に調達できることである。

図1:ユニコーン企業の一般的な定義は、創業10年以内で企業評価額が10億米ドル(約1130億円)を超える未上場のスタートアップ/ベンチャー企業である

 この特徴が、起業して間もない企業をして短期間で世界中にビジネスを展開することを可能にした。付言すると、クラウドは使用量に応じた課金モデルが基本なので、低コストで新たな施策を講じることが可能であり、例え事業が失敗した場合でもITコストは最小限で済む。このような特徴を最大限活用し、多くのチャレンジを短期間かつ低コストで、継続的にグローバル規模で行うことによって、ユニコーン企業は誕生したのである。

コロナ禍で露呈した経営課題としてのIT

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、私たちの生活様式は激変した。このような変化がいつ起こるか予測することは不可能で、不確実性は高まるばかりである。一方で、こうした変化をいち早く捉えて迅速に対応することができれば、経営にとって千載一遇のチャンスになる。逆にこの波に乗り遅れれば、せっかくの成長の機会を失ってしまう。

 例えば、コロナ禍では、オンラインでショッピングをしたり、エンターテインメントを楽しんだりする人々が増えた。動画配信サービスや宅配サービスなどでは、急激にアクセスが増加したにもかかわらずITはびくともせず、大きくビジネスを成長させた企業があった。半面、急増したアクセスに対応できずシステムがダウンし、予約や販売ができなくなってしまうサイトもあった。

 このように、大きな変化を追い風にした会社もあれば、波に乗り切れなかった企業も存在したが、その差は自社が有するITに対する「変化に対する柔軟性および俊敏性」であったと言って過言ではない。柔軟性と俊敏性を高めるためにクラウド活用は有効である。

●Next:ITのコントロールをベンダーから取り戻す

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