[事例ニュース]
昭和大学、電子カルテの診療データから疾病予測する「診療支援AI」、2022年内に臨床現場で検証
2022年9月15日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)
昭和大学横浜市北部病院は、電子カルテの診療データから即時に疾病を予測して治療方針の候補を医師に提案する「診療支援AI」を2022年度中に臨床現場に適用し、有効性を検証する。診療支援AIは、富士通Japanが2022年度中に開発する。昭和大学と富士通Japanは、このための共同研究を2022年9月から2023年3月にかけて実施する。両者が2022年9月15日に発表した。
昭和大学横浜市北部病院は、電子カルテの診療データから即時に疾病を予測して治療方針の候補を医師に提案する「診療支援AI」を、2022年度中に臨床現場に適用する。同病院が保有する匿名化した診療データを使ってAI技術の有効性を検証し、評価する。昭和大学はさらに、同病院での本運用、他の昭和大学附属病院への導入、研修医向け教育コンテンツへの展開を目指す(図1)。
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臨床現場に適用する診療支援AI技術は、富士通Japanが2022年度中に開発する。昭和大学横浜市北部病院の電子カルテシステムに蓄積した過去20年分の診療データと、同病院の専門医による医学的知見やアドバイスを基にして開発する。
AIシステムは、電子カルテに記載した主訴や患者所見などのテキストデータを自然言語処理(NLP)で解析し、鑑別診断候補となる疾患の分類をスコアリング評価する。この結果と過去の診療データを組み合わせ、総合的にデータの特徴量を算出する。この上で、類似の症例を検索するアプローチによって、疾患候補を提案する。
例えば、電子カルテに記載してある患者所見のテキストデータから「激しい頭痛」「発熱なし」「視力低下」「69歳」「男性」などの特徴を抽出し、過去の症例データを参照してスコア化。鑑別診断候補とスコアを「下垂体卒中(スコア0.90)」「くも膜下出血(スコア0.40)」「急性脳症(スコア0.30)」などのように提示する。
診療支援AIの効果として両者は、診療業務の効率化や、重要な疾患の見落とし防止などを挙げる。また、医療水準の格差是正にも貢献するとしている。電子カルテシステムとの連携による診療業務の効率化や、医療従事者の働き方改革を支援する新たな仕組みの構築などにも使う。
両者によると、国内の一般病院における電子カルテシステムの普及率は60%に近づきつつあり、蓄積した診療データの利用に期待が高まっている。