筆者がCMS(Contents Management System:コンテンツ管理システム)を導入したのはもう20年も前のことだ。その頃はCMSの概念さえ知らない人も多く、提供されているソフトウェアやサービスも少なかった。今では種類が多過ぎて選択に困るほどにもなっている。社内外を問わずWeb化されている時代なので、特に社外向けのWebサイトのコンテンツ管理やデジタルマーケティングには、CMSが必須のものになっている。
今では多彩なCMSが提供されている
一般にCMSと言えば、Webサイトを合理的に制作・運用できるとか、運用を外注せずに社内でできるとか、SEO対策やマーケティング施策をやりやすいとか、Webサイトの制作・運用に関わるものと理解されているようだ。つまり社外向けのWebサイト構築ツールのように説明されている。
CMSにはオープンソースソフトウェアで提供される無料版から有料版まで、さまざまな環境が提供されている。ECサイト構築に特化したCMSもある。無料で使えて最も親しみがあるのが、オープンソースの「WordPress」ではないかと思う。特にHTMLやCSSなどを知らない人やWeb人材がいない企業でも、Webサイトやブログを立ち上げることができる。

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同じくオープンソースで、より豊富な機能を持つ「Drupal」は大規模向け。プログラミングの知識は不要だが、機能が多すぎて素人では扱い難い。使いこなすまでには相応の時間が必要だ。しかしサービスベンダーの指導を受けながら導入すれば、高度な機能を活用できる。オープンソースの良いところはコミュニティによって進化し続けるところだろう。
有料のパッケージ型CMSは、個人や中小向けから大企業向けまで多種多彩だ。セキュリティ対策がしっかり施されており、サポートも付いている。月額料金は数万円から数10万円まで幅広い。国産のCMSが数多く提供されており、例を挙げると以下のようなものがある。
- Movable Type
- ShareWith
- Blue Monkey
- NOREN
- はてなブログMedia
- HeartCore CMS
また海外製品の代表的なものには以下のような製品がある。
- Dot Net Nuku
- Adobe Experience Manager
- Shopify
- Squaresspace
- Sitecore
なぜ企業活動にCMSが必要なのか
CMSが製品として提供されるようになったのは2000年頃とされる。だが筆者が導入した2004年ごろになっても、勤務していた建設会社の情報システム部門の人たちはCMSを知らなかった。当時、Webサイトの所管は広報部やマーケティング部であり、これらの部署が外注してWebサイトを構築し、管理も外注していたように記憶している。
そんな状況で筆者がCMSに注目したのは、Webサイトの構築・運用を楽にしようとか、マーケティングに利用するためではなかった。社内に膨大なデジタルコンテンツがあり、各部署がルールもなく保有し、イントラネットに公開されていたからだ。社外向けのWebサイトにも社内のデジタルコンテンツが使われていた。
しかし、コンテンツに対して機密レベルを含めて管理することも、承認プロセスを経て公開されることもされていなかった。デジタルコンテンツに対する保護や管理の概念がなかったのである。そんな状況を何とかしようと思ったのがCMS導入のきっかけだった。
当時、大規模向けのパッケージ型CMSは限られていたが、国産のNORENが盛んに宣伝していた。筆者は導入コストなどを考えて、たまたま友人が日本法人の代表をしていた米国製の「FatWire」を導入した。FatWireはその後2011年にオラクルに買収され、製品統合されて「Oracle WebCenter」として提供されている。
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