生成AIを企業で活用するために必要なことは?
2023年8月9日(水)CIO賢人倶楽部
「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、住友生命保険 エグゼクティブ・フェロー デジタル共創オフィサーの岸 和良氏によるオピニオンである。
インターネット上にある大量のデータを学習し、それに基づいて新しい文章や画像、音楽などを自動的に生成する人工知能、生成AIが大きな関心を集めている。対話型で質問に答える「ChatGPT」や、いくつかのフレーズから画像を描いてくれる「Midjourney」(画面1)など手軽に使えるサービスが登場。個人はもちろん、多くの企業や組織で導入が始まっている。
これら生成AIは、複雑な質問に文章で回答したり、プログラムのコードを作成したり、統計データを分析したりできるので、ソフトウェア開発、マーケティング、商品開発、顧客価値向上、事務合理化など、幅広い業界・業務に応用できる可能性がある。既存業務の生産性向上だけでなく、昨今注目されてきた「社会課題の解決」に資することも期待される。
私自身、社内業務や社外活動のために生成AI(主にChatGPT-4)を使っている。同時にCDO(チーフデジタルオフィサー)を務めているので、社内で生成AIの導入・活用を進めるべく取り組んでいる。その中で強く感じることは、生成AIを活用できる社員には共通する行動特性があることだ。
生成AIの活用に向く行動特性
なぜなら生成AIの活用を促しても、人によって反応や活用の度合いは異なる。これは生成AIに限らず、新しい技術やビジネスモデルにも共通するが、違いを生むのが行動特性にあると私は考えている。では生成AIを活用するには、どのような行動特性が必要だろうか? それは「創造性」「好奇心」「学習意欲」が高いことである。
創造性
創造性とは、新しいアイデアや解決策を思いつく能力や柔軟性のことを指す。生成AIは既存のデータから新しい内容を生成することができるが、その内容が必ずしも有用であったり、正確であったりするとは限らない。この時、生成AIを上手く使える人は、その内容だけで判断するのではなく、創造性を駆使してプロンプト(命令メッセージ)を改良したり、自分でもっとよいプロンプトを考えたりする(画面2)。これができるかどうかは、生成AIと付き合うためにとても大切である。
画面2:プロンプトを工夫・改良することで回答の質が上がる拡大画像表示
好奇心
好奇心とは、知りたいという欲求や興味のことである。すでに多様な分野やテーマに対応するさまざまな生成AIが登場している。例えば文章などで質問に回答する生成AIはChatGPTだけではないし、絵を描く生成AIも複数あり、増えている。こうした生成AIの動向に興味や関心を持てば、生成AIを活用する可能性を広げることができる。
学習意欲
学習意欲とは、知識や技能を身につけることに対する動機や関心のことである。学習意欲が高い人は、生成AIの仕組みや特徴を学んだり、生成AIの利用に関するガイドラインやルールを確認したりすることができる。ある程度まで仕組みを学べば、生成AIの利用方法や限界を推察したり理解したりできる。学習意欲が高い人は、生成AIの利用における問題や課題を解決することができる。
以上のように、創造性・好奇心・学習意欲が高い行動特性を持つ人は、生成AIを効果的に活用することができるだろう。これら行動特性は、生まれながらに持っている場合だけでなく、後天的に育てることもできると私は考えている。企業は社員の行動特性を評価したり育成したりすることで、生成AIの活用を推進することができるのだ。
●Next:生成AI活用の体制や教育を考える
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