生成AIが急速に浸透し、データの可視化や分析のみならず、データマネジメントも自然言語で行える時代を迎えている。企業のデータマネジメントに生成AIを活用していくためには、データパイプラインの自動化やデータ品質の維持・高度化をはじめ、クラウド横断のマスタデータ管理、AI/データガバナンスとプライバシーの確保など、多岐にわたる取り組みが必須となる。2024年3月8日に開催された「データマネジメント2024」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)に、インフォマティカ・ジャパンの森本 卓也氏が登壇し、国内外の最新事例や潮流を交えながら、先進企業が取り組むAI/データマネジメントの新たなグローバル標準や最先端技術について解説した。
提供:インフォマティカ・ジャパン株式会社
生成AIの活用拡大に伴い
データマネジメント標準の再構築が加速
冒頭、インフォマティカ・ジャパン グローバル・パートナーテクニカルセールス ソリューションアーキテクト&エバンジェリストの森本 卓也氏は、「いまや私たちは生成AIを中心とした世界の中を歩んでおり、生成AIはデータの世界にも多大な影響を与えています」と訴えた。
インフォマティカがグローバルのCDO(Chief Digital Officer)600名に対して実施した調査結果(図1)によれば、CDOのうち45%は生成AIを最優先事項としてすでに導入済み、54%が近く導入予定だという。また、100%のCDOがデータマネジメントがデータ戦略の中核を担うと回答している。AIとデータマネジメントへの取り組みは完全にグローバル標準になっていると言えよう。
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次世代データマネジメントの再構築に向けた4つのアプローチ
生成AIの登場とともに課題も増え、より新しいデータマネジメントが求められるようになった。多くの先進企業で、次世代データマネジメントのグローバル標準の再構築に向けた動きが広がっている。そのアプローチとして、森本氏は次の4つの視点を上げ、それぞれ最新事例の紹介を交えながら解説した。
- データエンジニアリング
- マスタデータ管理(MDM)
- データプライバシー&ガバナンス
- データプラットフォーム
1. データエンジニアリング
シンプルでサステナブルなデータパイプライン環境を
すでに多くの企業でデータパイプラインは構築されていると思われるが、その再構築にチャレンジする企業が増えていると森本氏は述べる。
データパイプラインに求められる具体的な目標は、「リアルタイムアナリティクスを実現するストリーミング連携」「業務でのデータ活用を加速させるAPI連携」「クリティカルな業務に直結するデータの品質管理」「既存基幹システムとのファイルとデータ連携の仕組み」の実現だ。それらの要件にひとつひとつ対応しながら、データパイプラインの運用を長年続けてきたことで、その環境が複雑化、技術的に負債化してしまっているケースが多々見受けられる。
「複数のツールを導入・運用し続けるため、ソリューション別に開発者をアサインしたりコーディングを行ってきたりしたことが原因で、運用可能なデータエンジニアの不足や、運用コストの増加を招いてしまった――この課題を解決するために、シンプルでサステナブルなデータパイプライン環境へ再構築する動きが拡大しています(図2)。具体的な手法が、様々なデータの連携パターンに対し、1つのツール、1つの運用監視で対応可能な仕組みの実現です」(森本氏)
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ここで森本氏は、インフォマティカによるデータパイプライン再構築のケースとして、保険サービスを提供するNRMA社の事例を紹介した。同社は、長年にわたるデータプラットフォーム運用の結果、データ連携処理の複雑化やサイロ化、そして運用コストの増加を招いていたが、インフォマティカの支援のもと、全ての処理を単一のデータマネジメントプラットフォーム上で実現できるよう再構築した。その結果、チームのメンテナンスの生産性を10倍向上させたほか、60%の処理時間の短縮など、様々なメリットを享受できるようになったという。
「今後の爆発的なデータ増を見据え、量的な変化にも対応可能な仕組みを実現する必要があります。そのためには、メタデータ管理やデータガバナンス、AIなどとの連携によるシナジーを創出していくことがますます求められるようになるでしょう。また、ローコード/ノーコードのツールベースか、コードベースか、最適なパイプランの選択も必要です」(森本氏)
2. マスタデータ管理(MDM)
SaaSやアプリケーションのサイロ化を解消
SAP ERP 6.0の標準保守期限が2027年に終了することをはじめ、多くの企業でDXがPoC(概念実証)の段階を経て2周目に入りはじめた。さらに、データメッシュへの取り組み、生成AIの活用拡大も契機となり、MDMに取り組む企業が増えている。
「例えば、DX推進の観点からは、マスタデータが正しく管理されていなければ、事業部を横断したデータ活用が困難です。生成AIの活用拡大においても、マスタデータが統合されておらず、かつ品質が担保されていなければ、生成AIから適切な回答を導くことができません」と森本氏はMDMの重要性を説明する。このような背景から、多くの企業で、クラウドネイティブであり、機敏性と柔軟性に優れたMDMの実現が求められている。
ここで森本氏は、シェアライドサービスのUberをはじめとした著名テック企業が、インフォマティカの支援のもとMDMを再構築した事例を紹介した。
「これらの企業に共通していたのは、あらゆる顧客接点の顧客情報を統合・分析することで優れた顧客体験の実現を目指していたことです。そこで、これまでサイロ化されていたSaaSアプリケーションに対して、各アプリケーションを横断するマスタデータ管理基盤を構築しました(図3)。結果、ユーザーサポートの品質向上、問合せの件数の削減、顧客満足度の向上、従業員の業務効率化、といった数々の成果を上げられました」(森本氏)
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今後のマスタデータ管理については、データカタログやデータマーケットプレイスなど、他のデータマネジメントとの連携によるシナジーが必須要件となっており、その潮流はますます拡大していくと思われる。
3. データプライバシー&ガバナンス
データメッシュ型のガバナンス体制を再構築
「誰もがデータを簡単に扱える“データの民主化”の時代が目前に迫っています。生成AIの登場がそれを後押しする一方、多くのリスクも生まれつつあります」と森本氏は警鐘を鳴らす。
その一例が、「野良SQLや野良データの氾濫」「信頼性の不確かなデータに基づく意思決定」「予期せぬデータ/AIのプライバシー/規制違反」だ。これらのリスクに対処するために、データメッシュ型のガバナンス体制の再構築に取り組む企業が増えている(図4)。
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このアーキテクチャの中軸となるものが、データ提供者と消費者の架け橋となり、双方が望む形で安心安全な管理されたデータプロダクトの売買を可能とする「データマーケットプレイス」ソリューションである。
森本氏は、世界第2位の大手バイオ製薬会社であるGileadの事例を紹介。Gileadでは、インフォマティカのデータマーケットプレイス、データカタログ、MDM、データ品質管理を活用することにより、安全かつ信頼性の高い包括的なデータプロダクト管理を実現した。結果、データプロダクトの開発スピードを4倍に向上させ、データを活用するビジネスユーザーが4500人以上に増加するなど、AI/データ駆動型の企業へと変革することに成功したという。
4. データプラットフォーム
ツールを乱立させず、包括的なプラットフォームを導入
ここまで紹介してきたアプローチを踏まえて、では、自社に最適なデータマネジメントとは何かと悩む企業もいるだろう。多くの企業では、複数のツールを導入・運用することによるサイロ化が発生している。そのため、様々なデータマネジメントツールを統合化した、データプラットフォームへと再構築していくことが求められていると言えよう。
そうした課題解決のために、インフォマティカが提供しているのが、データマネジメントプラットフォーム「Intelligent Data Management Cloud(IDMC)」だ(図5)。データカタログをはじめ、データ統合、変換、API/プロセス統合、データ品質、MDM、データガバナンス&プライバシー、データシェアリングなど、データマネジメントに必要なソリューションを包括的に提供するプラットフォームだ。IDMCを導入すれば、先に述べたデータマネジメントツールの乱立は起こりえない。
さらに、インフォマティカは、AIエンジン「CLAIRE」をIDMCのすべてのソリューションに組み込んでおり、データの自動化と洞察、自律化を、すべてのデータマネジメントを横断して実現できるという強みを持つ。
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最後に森本氏は、「グローバルでは、データエンジニアリング、マスタデータ管理、データガバナンスの各レベルでデータマネジメントの再構築が進んでいます。それらの課題を解決するため、マルチハイブリッド、プラットフォーム型、AI駆動のデータマネジメントプラットフォームの活用を、ぜひ一度ご検討いただきたい」と述べ、セッションを終えた。
●お問い合わせ先
インフォマティカ・ジャパン株式会社
URL: http://www.informatica.com/jp/
TEL:03-6403-7600
E-mail:info-jp@informatica.com
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