[市場動向]
アステリア、ノーコード開発ツール「Click」のMikoSeaを買収
2025年9月18日(木)IT Leaders編集部
アステリアは2025年9月16日、ノーコード開発ツール「Click」を開発・提供するMikoSea(ミコシー)を買収すると発表した。アステリアの「Platio」では対応が難しかった、複雑で大規模なモバイルアプリやWebアプリを開発できるようにする。一方のMikoSeaは、アステリアの傘下に入ることでClickの普及加速を狙う。
アステリアがMikoSea(ミコシー)を買収する。買収金額は非公開としている。画面上の部品をドラッグ&ドロップ操作してモバイルアプリやWebアプリを開発できるノーコード開発ツール「Click」(画面1)の開発元である。

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MikoSeaの設立は2022年6月。ほとんど宣伝活動をしてこなかったにもかかわらず、すでに約2万7000人がClickを利用して、累計7万種以上のアプリが開発されているという。主な顧客企業にベネッセコーポレーション、小田急電鉄、NTTデータ、松井証券などがある。
Clickの特徴として、(1)さまざまな部品を備え、iOS/Android上でネイティブ動作するモバイルアプリ/Webアプリをノーコードで開発できること、(2)管理画面が自動で作成され、ユーザーやコンテンツ管理など運用が容易なこと、(3)AWSのオートスケーリングを実装し、10万人規模のユーザーにも対応できることを挙げている。
これに対し、アステリアが提供中の「Platio」は、ノーコードでモバイルアプリを開発できる点は同じだが、(1)開発の対象がネイティブアプリではなく、Platio上で動作するミニアプリであること、(2)簡単に開発できることを重視している半面、複雑なアプリの開発は限界があること、(3)Webアプリは開発できないことなどの点で異なる。
つまり、アステリアが手中にするClickは、ノーコードでネイティブアプリやWebアプリを開発するという、これまで欠けていた重要なピースを埋める位置づけとなる。加えて、「MikoSeaのカルチャーは当社にフィットする」(アステリア 代表取締役の平野洋一郎氏)点などを評価して買収を決めた。
アステリアはPlatioとClickを融合したノーコード開発プラットフォーム「Platio Canvas」を2025年9月29日に発売する。「大規模アプリ開発を、圧倒的なスピードと低コストで実現する」とうたい、同年6月26日に発表している。大手企業向けで、月額利用料は20万円からと、それぞれ2万円以下のPlatioやClickとは異なる。これらのラインアップにより、個人から大手企業まで幅広いニーズに応える(図1)。

アステリアは1998年の創業以来(当時の社名はインフォテリア)、システム同士やシステムと人、現場の機器、情報と人などを“つなぐ”ことを軸に、さまざまな製品を開発・提供してきた。中核のデータ連携ツール「ASTERIA Warp」、工場など現場の情報を収集する「Gravio」、情報を閲覧・共有する「Handbook」、そしてPlatioなどである。
近年は資本提携しているWeb3スタートアップのJPYCが発行する円建てステーブルコイン「JPYC」との連携強化など、ステーブルコイン事業の拡充を進めている。この点、Clickには決済部品があり、「PayPay」や「fincode」を実装できる。ここにJPYCの実装に必要な機能を追加する計画だ。決済手段としてアプリの開発・提供者がJPYCを簡単に導入できるようにし、普及につなげる。