[市場動向]
NECが「知財DX事業」を開始、日米欧1250万件超の特許データを基にした“知財AIツール”を提供へ
2026年1月21日(水)神 幸葉(IT Leaders編集部)
NECは2026年1月19日、企業の知的財産業務の効率化と高度化を支援する「知財DX事業」の立ち上げを発表した。事業の端緒として、同年4月に、自社開発のAIモデルと日米欧約1250万件以上の特許データをナレッジにした知財管理業務特化のAIツールとコンサルティングサービスを提供する予定。同社は知財DX事業の売上目標として、2030年度末までに30億円を掲げている。
近年、企業の競争力強化やM&Aの意思決定において知的財産の重要性が高まっている。「知財ポートフォリオの戦略的な評価・管理、事業・技術戦略の実現に向けた知的財産の活用が企業価値向上に密接に関係している」(NEC)。一方で同社は、多くの企業の知財部門では膨大な情報の迅速な処理が求められ、専門人材の不足や業務の属人化といった課題が顕在化していることを指摘する(図1)。
図1:知財部門が直面する課題(出典:NEC)拡大画像表示
NECによれば、知財管理業務においても効率化や高度化のためにAI活用が進みつつあるが、汎用的な生成AIでは高度な専門知識を要する技術理解や法的判断が十分に行えず、期待した効果が得にくいのが現状。また、企業が個別に専用AIを開発するにはリソース不足という障壁もあるという。
こうした状況を受け、NECは知的財産業務のデジタル化を推進し、担当部門の業務効率化・高度化を支援する「知財DX事業」を開始する。同社の研究開発・知財部門が一体となって蓄積してきたノウハウや約4万3000件の保有特許実績、自社が技術・製品の最初の顧客事例となる“クライアントゼロ”で得た知見・成果を融合させて事業を推進するとしている。
知財業務特化のAIツールとコンサルティングを提供
知財DX事業の核として、NECは同社の知見と自社製AIモデル、そしてRAG(検索拡張生成)技術を組み込んだ、知財管理業務特化のAIツールをSaaSで提供する。日本、米国、欧州の約1250万件以上の数値化した特許データを学習しており、技術資料と簡単な指示を入力するだけで、類似特許の抽出や高精度な回答を生成できるとしている(図2)。
図2:知財業務に特化したSaaS型AIツールの特徴(出典:NEC)拡大画像表示
先行技術調査や特許性判定、明細書作成といった、従来手作業で行っていた定型業務の自動化が可能で、NECの社内実証では、従来の定型業務にかかる時間を最大効果で約94%短縮を確認している。
高度な活用としては、M&Aアドバイザリーの手法と自社開発のアルゴリズムを取り入れたAIモデルが市場規模や自社・他社の特許資産を多角的に可視化。将来の技術戦略や新規事業創出といった上流工程での意思決定をサポートする。加えて、知財実務に精通したコンサルタントによる伴走支援も行い、業務効率化ツールの定着と知財活動の変革を後押しするとしている。
NECは今後、国内外の特許事務所とのパートナー連携を進めて、幅広い顧客に対してAIツールとサービスを提供していく。現在は精密機器、総合電機、消費財、素材メーカーとの実証実験を進めており、これらの取り組みを通じてサービスの改善と拡充を図る計画だ。同社は知財DX事業の売上目標として、2030年度末までに30億円を掲げている。
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