[エンタープライズ・システムのためのWeb 2.0]

エンタープライズ2.0に求められるサーチ機能

2007年10月2日(火)ファストサーチ&トランスファ

過去から現代に至る情報量の増大過程において、現時点においてすでに「情報の爆発」が起こっている。「情報の爆発」によっていったい何が起ころうとしているのだろうか。おそらくこの現象が、エンタープライズ2.0のすべての根元だと考えられる。通常の手段では管理できないほどの情報が溢れ、そこから有意な情報を見つけ出す、あるいは発見するために検索、ここでは特にエンタープライズサーチが有効な手段であることを紹介する。

ユーザーのサーチ視点:4Wエンティティ

これなどは標準製品の事例の1つだ。例えば、サッカーと入力した場合、画面の中心に表示されているように、サッカーに関するいろいろな記事がページランキングなどを含めて出力される。ここでポイントなのは、サッカーに関連する国に興味があるのか、人名なのかが、左側の軸に表示される点だ。普通は「サッカー」と検索すると、何億件と出てきてしまうが、関連のエンティティで問い合わせることによって、たとえば、オシム監督に興味があるのか、ある特定のチームに興味があるのかといった、「サッカーの何に興味があるのか」が表示されるようになっている。キーワード検索だけでは、十分な絞込みができない状態になりつつあるので、こうした機能が考えられている。

図 4Wエンティティ

先進事例:楽天市場

楽天の場合、すでに登録されている顧客の数が3千万人を超えている。これは銀行のオンラインシステムの状況を遙かに超えている。取り扱い品目だけでも、1700万アイテム強、取り扱いされているテナント、楽天のお客様が5万社を超えている。楽天の検索システムのポイントは、1700万アイテムの中から基本的には、3クリックか4クリックで欲しい商品に到達できることだ。

しかも、ある品目に対してサーチをかけた場合、一番安いからといって、いつも同じテナントが表示されるわけではない。それではテナントに対してアンフェアになるので、顧客とテナントにとってフェアである、非常にオプティマイズされた形をとっている。それが企業の戦略でもあり、マーケティング戦略となる。つまり、こうした処理をサーチの中のリザルトプロセッシングに組み込むことで、楽天もテナントも顧客もすべて満足するような結果を生み出し、利益率を向上し、店舗拡大などにつながる。

もう一つは「デジカメ」の事例だが、最初に1万数千件ヒットしたものが、3クリック、4クリックで最終的な目的に到達するための「鍵」が左側にある。ファッションの分野で3千件出ているが、これはRDBだとカウントできない。

図 先進事例:楽天市場

eコマースの世界では「0ヒットは避けなければいけない」というのは鉄則だ。「検索結果が見あたりません」といった時点で、30%強の人が検索を止めてしまう。つまり、0ヒットとなった時点で、収益が30%下がることを意味する。楽天の場合は、優先度の高いものから表示される、サーチに特化したインデックスを作ることによって、決して0ヒットにはならない。これは、eコマース系の最大の技術的なテーマである。

ビジネス的なテーマは、パーソナライゼーションとレコメンデーションである。つまり、過去の検索履歴から一人一人の顧客をより深く、どこまで理解しているかということだ。あるいは結果として、最もヒット率の高い製品、サービスを推薦していけるかということだ。検索したときに横に更新情報を表示するようなアドワーズ、アドセンスのような仕組みが当然が必要となる。今後、情報が爆発し、人口が増えていく中で、よりパーソナライズされたきめ細やかなサービスが必要となり、そのベースにサーチがあるという事例の1つである。

先進事例:Sesam.no:融合コンテンツから精査されたビジネス情報を創出・有効活用

「セサミ」という北欧のキャリア系の企業における、サーチ最先端の事例の1つである。最近のコールセンターでは、電話がかかってきた段階で、登録されている顧客の売上、入金状況、クレーム、などの状況が表示され、顧客対応を行っているケースは結構多い。

ここで行っているのは、電話番号が表示された段階で、その人に関連するブログサイトを見ることができて、ポジティブな状況なのかネガティブな状況なのかが即座にわかったり、あるいは特定の企業の最新のホームページを表示するといったことだ。日本の例で言えば、ある時点でのリアルタイムな株価を表示する東京証券取引所を挙げることができる。コールセンターに電話をかけ、法人営業部に電話がつながった段階で、銘柄や株価の変動状況が一度にわかるようになっている。特定の顧客から電話がかかってきた場合、「この情報とこの情報は見れるようにしてくれ」という企業側の要望からこのような形になっている。

サービス業などで電話がかかってきたときも、相手の携帯電話の場所がわかるので、「今、電話をかけているその場所から、当社にはこのように来てください」ということができる。その裏では、その会話は音声から文字情報に変換され、CRMと連動している。こうしたシステムは実際にすでに稼働しており、顧客満足度を向上させている。

図 先進事例:Sesam.no

先進事例:リアルタイムアラート・データマイニング

サーチにおけるリアルタイム性を要求される事例として、ロイターのキャプテンマーケットの事例を紹介する。これは、ロイターとともに数年かけてFASTが構築してきたものである。まさにリアルタイムで行う「プッシュ型サーチ」で、世界中の証券取引所の情報を何万人ものディーラーに対して提供している。800万くらいあるルール(株価の変動状況に応じた条件)を何千人か、何万人のディーラーの方に、株価の状況が変わるたびに、リアルタイムにアラートという形で出している。事前に、自分が気になる銘柄と条件を設定しておけば、それがサブセカンドで提供されていく、というシステムだ。

更新系に近い情報まで取り込むことで、サーチからスタートして、リアルタイムでどんどん変わっていく情報を提供するところまで、製品自体が進化している。ミッションクリティカルな事例の1つである。

図 先進事例:リアルタイムアラート

近未来:DWH/AIW ハイブリッド エンタープライズ アーキテクチャ

これは、私たちがいくつかのお客様と行っている領域の1つであり、これまで常識であった「データウェアハウス」を否定するものだ。基幹系において、ERP、会計系、財務系、人事系、給与系、そういうものは当然、既存のシステムとして稼働している。以前(今でも)は、1年も2年もかけて、データウェアハウスを構築するためのデータのノーマライゼーションを行っていたが、構築したときには、データが古くて使い物にならない、というケースが多かった。

今、その領域をサーチインデックスに取り込んで可視化していく手法を考えている。データウェアハウスを構築しなくとも、スキーマレスである程度できるのではないかということだ。すでにいくつかのパイロットの事例が出ており、半年後、1年後くらいには、従来のシステムを構築するSIerやITのコンサルティング会社にとっても、最も興味深い最先端の事例になると考えている。

図 ハイブリッド エンタープライズ アーキテクチャ

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