米国発の金融危機が世界の実体経済に大きな影響を与え、過去の苦い経験を教訓に比較的経済の基礎条件のよくなってきた日本にも、大幅な株価の下落が襲ってきた。先行きの不透明感は不安となり、世界恐慌の文字が飛び交う。自己資本比率が低下した金融機関は是正措置を強いられ、多くの企業が大幅な下方修正の決算を行っている。社会活動の基礎である経済に、まさに「危機」が訪れている。
社会的な大規模危機ばかりでなく、個々の企業経営においてもいろいろな危機が訪れる。きっかけは些細なことから始まり、インシデントがアクシデントになりクライシス(危機)に至ることがあるし、市場環境が危機を招くこともある。私が属している建設業も市場縮小と供給過剰の構造的問題から脱却できず、長く危機的環境のなかで経営を強いられている。ここにきて連日の如く起こる取引先の不良債権問題は、深刻な現実なのである。
さて、このような危機にさらされているとき、システム部門の人たちはどう対処すればよいのだろうか? 私は体験を通じてこんなふうに考えている。
「ピンチはチャンス」は本当だ
「ピンチはチャンス」と言う。精神論や単なる掛け声ではない。危機感を持つと脳内物質が活性化する。火事場の馬鹿力の伝である。アドレナリン(エピネフリン)で危機を意識する。セロトニンでバランスを取りながらドーパミンを誘発し、βエンドルフィンで危機回避に猛進する。私が専門でもないシステム部門の責任者になって、全面再構築に取り組んだ時の感覚である。今思うと当時はやけに食べ、甘いものを欲しがった。これは脳の活性化のためだったのではないかと思う。
危機に直面したら上昇思考しかない。落ちるところまできたから危機なのだ。そう思うと腹が据わる。腹が据わると冷静に全体が見えるものだ。私の第一のミッションは、情報総コストの30%減だった。建設市場の急激な縮小という当時の経営環境からいえば、販売管理費の削減とISによる経営効率の向上は必至だし、経営者のミッションでもあった。30%減は姑息な手段を許さない。結果的にはそれがよかった。
全面再構築はそんな中から出てきた発想だ。ちまちましていたら改革はできない。しかし改革は地道にやらなければできない。中期経営計画を反映するグランドデザインを描き始めた。ヒト、モノ、カネのデータ中心設計、メインフレームを捨てマルチベンダーのオープンシステムへの移行、Webシステムへの統合、発生時点処理型のコンセプト、アウトソーシングの積極活用、それを実現できる実施体制づくり・・・。経営層と事業部門の協力のもとで計画を一気に進めた。
再構築プロジェクトを通じて大きな出金はあるが、同時にそれ以上の削減をして財務負担を増やさずキャッシュ・フローも悪化させない。そんなプランが出来たのも、危機感が背中を押すからである。改革成功事例は必ず何らかの危機感に支えられている。特に経営トップの意識に現れている。経営改革にISが欠かせない存在である現在、危機感がISを後押ししていると言える。
そう考えたら、経営的な危機はシステム部門の本領を発揮できる絶好のチャンスではないか? ところが現実はなかなかそうなっていない。そこにはもう一つの行動の壁があるからだ。
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