2006年12月27日、企業会計基準委員会は、工事契約に関する会計基準と適用に関わる指針を公表した。同基準は2009年4月1日以後に開始する事業年度から適用され、「工事契約」に関わる工事収益と工事原価は、決算日における進捗度に応じて認識する工事進行基準が原則適用となる。「工事契約」とあるので、建築や土木などの工事に適用されると思われがちだが、本誌読者ならご承知のように受注制作のソフトウェア開発にも適用される。
これを受けて蜂の巣を突くような騒ぎになったのが、情報サービス産業である。確かに完成基準一辺倒できた情報サービス企業にとって、進行基準が適用されるとなれば、インパクトは大きい。2008年4月1日以後に開始する事業年度から適用された、いわゆる日本版SOX法と並び、例えば「SOX」か「進行基準」と銘打ったセミナーが常に超満員という状況になったゆえんだ。
中国では10年前に導入済み
会計基準を巡る議論の流れは収益認識基準を明確にし、投資家に対する共通認識を形成する国際会計基準へ統合していく方向にある。米国会計基準に近い日本も、その方向への見直しを迫られている。システム開発プロジェクトに進行基準が適用されるのはその結果であって、すでに導入の是非を議論する段階ではない。
筆者が中国・精華大学の教授をしている知人に聞いたところ、中国では10年ほど前に財務省が「具体会計基準−製造契約法」を発表し、1999年1月1日から上場建設会社やソフトウェア会社に対して、工事進行基準を原則適用としている。さらに2003年、同法に基づいた「建設企業会計計算要領」が発表され、2004年1月1日からは株式を公開していない建設会社やソフトウェア会社にも適用されるようになった。
IT産業は10年前の建設業?
一方、日本の建設業における収益認識基準として工事進行基準が議論されたのは、もう10年以上も前のことである。1998年からは法人税法で長期・大型工事(当時150億円以上・工事期間要件2年以上、現在10億円以上・工事期間要件1年以上)については、工事進行基準が強制的に適用されている。建設業全体でみると、義務化されているもの以外は工事完成基準が採用されているし、規模の小さい企業ほどその傾向は強い。だが大手企業は全面的に進行基準を適用する方向に動いている。
もちろん、進行基準にすれば会計処理の手間がかかるし、進捗管理や原価管理の精度を上げなければならず、管理の仕組みを整えなければならない。だが、これらは企業としていずれは実現しなければならないことだ。
加えて、ソフトウェア開発に進行基準を適用することに違和感はない。進行基準の適用には3つの要素がある。(1)工事収益総額、(2)工事原価総額、(3)決算日における工事進捗度が信頼性をもって見積もれることだ。進行基準の適用によって、品質を担保する仕組みのない情報サービス産業が、コスト意識と共にプロジェクト管理や制作品質の改善を実現する期待がある。
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