情報システム専門の子会社(情報子会社)を持つユーザー企業は、少なくない。1980年代からいろいろな目的を持って設立されたが、事業会社として成功した一部の例を除けば、総じてうまくいっているとは言えない。多くの問題を抱えたまま、将来展望を描けない情報子会社が実に多いのだ。
1990年代の後半から2000年代初期にかけては、情報子会社に対するITベンダーの資本参加やM&Aが、「戦略的アウトソーシング」という美辞麗句のもとにブームのようになった。初期契約期間を経た今、その問題も現れてきている。売却元であるユーザー企業のキャッシュフロー改善など特殊事情を除けば、長期安定収入を獲得できるモデルが、ユーザーとITベンダーのどちらに有利に働くかは、明らかだったはずだ。これも情報子会社の問題に帰着する。
深刻化する情報子会社問題
情報子会社の設立目的は、おおむね(1)肥大化する管理コストの分離や圧縮、(2)ノウハウの集約化によるコスト削減とグループ企業への展開、(3)ノウハウの外販事業展開によるプロフィット化、(4)情報系人材やグループ内人材の受け皿、に集約されると思われる。
しかしこれらの目的は、どれもうまく達成されていない。目的とした親会社の情報コストが下がらない。外販ビジネスが進まず、利益も取れない。技術革新にキャッチアップできず、外注管理に甘んじている……。筆者はこんな状況を、あちこちから聞かされる。
システム部門のベテランが情報子会社に出向・転籍するケースも多いが、それでガバナンスや透明性が保てるのかも疑問だ。放置すれば、内部スキルの低迷や社員のモチベーション・モラルの低下につながり、企業のリスク問題になってしまう。親会社の経営形態がカンパニー制や事業部制に移行した場合などは問題がさらに複雑化している。
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