クラウドに挑む国内主要ベンダー各社はどういったサービス内容やサービスレベル、品質で新市場に挑むのか。5社の担当者に解説してもらう。
グーグルは、自社で組み立てた「ホワイトボックス」と呼ぶPCサーバーをデータセンターに大量に導入。データベースは自社開発の「Google File Systems」を使っている。セールスフォース・ドットコムのデータセンターにはデル製のサーバーが立ち並び、その上でオラクル製のデータベースソフトを稼働させている。
では国産ベンダーが提供するクラウド環境の実態はどんなものなのか。提供されるサービスの内容や品質はどうか。それをお知らせするため、本誌は日本の大手ベンダー5社に、それぞれのクラウドサービスの解説を依頼した。ただし自由に解説するのではなく、以下の5項目には「ぜひ言及してほしい」とお願いした。
- サービス範囲
- クラウドで提供するサービスの概要。HaaS(IaaS)、PaaS、SaaSなど。できるだけサービスの概要を図示する
- サービスのシステム構成
- クラウドサービスに使用するサーバーやストレージ、ネットワーク機器といったハードウェアの機種や構成と、仮想化や運用管理に用いるソフトウェア
- サービス品質
- サーバーやストレージの規模や性能、ネットワークの帯域などに関わる情報。可用性などサービス品質に関わる情報
- 柔軟性
- クラウド資源を追加・削除する際の手順、技術について。変更に要する期間など
- セキュリティ
- データの混在や漏えいを防ぐ仕組みや、技術について
次ページ以降に各社の解説を掲載するが、本誌編集部は若干の行数調整、用字用語の修正以外は施していないことをお断りしておく。各社のビジョンやポリシー、考え方を極力、そのままお伝えしようと考えたからである。
そのため何社かは、例えば「サービスのシステム構成」に言及していない。「クラウドサービスにおいて、ユーザーは雲の向こうでどんな技術が使われているかを意識する必要はない。それは我々の仕事」といった考えからのようだ。編集部では「そうはいっても、サービスの基盤となるシステムの構成を知らせておくことはユーザーの安心感を誘う意味で重要」と考えているが、この点は各社のポリシーに任せた。
サービス品質や柔軟性についても、それほど詳しく説明していない企業が多い。各社ともクラウドサービスを発表したもののまだ初期段階であり、現時点ですべてが子細に決定しているわけではないところから来ている。
なお急な依頼かつ、限られたページ数と時間の中で、解説記事を執筆いただいた各社の担当者の方々には厚くお礼を申し上げたい。
NEC
自社利用で“検証済み”の技術をコンサルティングと合わせて提供
NECは、組織・構造改革と業務プロセス改革、IT改革からなる経営システム改革を実施。これに伴い2009年4月、クラウド指向のサービスプラットフォームを構築した。現在、このプラットフォーム上で自社および国内外の主要関係会社をカバーする販売・経理・資材といった基幹システムの全面刷新に取り組んでいる(編集部注:詳細は製品&サービス解説—「クラウド基盤上でSAP ERPを稼働させる」NECが400億円を投じ、グループ基幹系を全面刷新を参照)。
2009年7月からは、この経験から得たノウハウを基に「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」として一般への販売を開始した。図Aに、同ソリューションのコンセプトを示す。NTTドコモのiモードシステムや携帯料金精算システムといった大規模かつミッションクリティカルなシステムに多くの実績を持つOMCS(Open Mission Critical System)技術を生かし、企業の基幹系システムを担えるサービスを展開していく。
3つの提供モデル、既存システムとの連携も
クラウド指向サービスプラットフォームソリューションは、サービス提供モデルとして「SaaS型」「共同センタ型」「個別対応型」を用意している(図B)。IT資源だけでなく、ビジネスモデルコンサルティングサービスも提供する。
SaaS型は、企業間に共通する業種別アプリケーションをサービスとして提供する。共同センタ型は、同一の目的を持つ複数の企業がクラウドを共同利用するモデルだ。コンソーシアムや検討会の設立、業務プロセス/アプリケーション標準化促進からシステム運用までを、NECがサポートする。
個別対応型は、企業ごとに専用のクラウド環境を提供する。業務プロセス改革を通して業務の標準化や共通化を図ることで企業内のアプリケーション数を削減し、システムの全体最適化を促進する。こうして構築したクラウドは、SOA技術をベースに既存システム共と柔軟に連携できる。同センタ型と個別対応型の価格やサービスレベルは、ユーザーごとに個別に見積もる。
基幹系への適用を視野に高信頼性と効率性を両立
データセンターには、ユーザーが必要とするシステム規模に合わせて自在に仮想リソースを生成する仮想化制御ソフトウェアを導入。システムの自律生成や堅牢なセキュリティ、最適配置による省電力、システム性能の可視化などを実現する。
データセンター内のサーバーには「Express5800/ECO CENTER」「Express5800/A1160」などを導入。サービスの信頼性と効率性を向上する。
Express5800/ECO CENTERは、省電力型のCPUやメモリーを搭載するとともに、変換効率92%の高効率電源を採用。さらに、冷却効率を高める機構も備えている。これらにより、実動作時の電力と夜間停止時などの待機電力の両方を削減できる。
Express5800/A1160は、全データパスやメモリー系におけるエラー検出・訂正機能のほか、OSに致命的なエラーが発生して処理が停止するOSパニックの極小化といった機能を備える。
このほか、万一の障害時にも業務を止めずに復旧するための冗長性確保など、高信頼・可用性を実現する仕組みを数多く実装している。処理量が急激に増えた場合にサーバー自体を増設せず、4CPU搭載のモジュラーボックスを追加するだけでシステムを拡張できる点も、クラウド向きと言える。
クラウド指向サービスプラットフォームソリューションを支える技術について述べた。当社はこのほか、「共同IT基盤サービス(RIACUBE)」を提供している。RIACUBEは、仮想化したIT資源をプール化して統合的に運用管理し、ユーザーのニーズに応じて提供。WindowsやLinux、UNIXといった主要なOSに幅広く対応し、柔軟で安定した利用環境を実現する。サービス要件として非機能要求項目を採用しているため、ユーザーは可用性や運用保守性などのサービスレベルを選択できることも特徴だ。
NECは今後、クラウド指向サービスプラットフォームソリューションやRIACUBEなどのサービスをトータルに提案し、「持たざるIT」を目指すユーザー企業を支援していく。
- 東 健二
- サービスプラットフォームシステム開発本部 本部長
- 細田 稔
- マネージドプラットフォームサービス本部 本部長
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