米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)が来日し、2009年11月5日に都内で記者発表会を開催した。同社のクラウドコンピューティングへの取り組みの現状や将来展開が、話題の中心となった。同社は併せてWindows 7の早期導入予定企業数を言明。228社の国内企業が導入を検討していることを明らかにした。
記者発表会の冒頭、バルマー氏は「10年前を振り返ると、世界中の情報に瞬時にアクセスすることは難しかった。それが今では、手元の携帯電話からでも、いとも簡単にできる」と語り、技術革新の速さを強調した。
PCを中心に進展してきたIT革命は、携帯電話をはじめとするインテリジェントなデバイスにも広がっている。並行して、様々なサービスをネットを通じて利用するクラウド時代が本格的に幕開けようとしている。
こうした中、同社の戦略としてバルマー氏が明らかにしたのは、PCと携帯電話、テレビという3種類のデバイスから、機器の違いを感じることなくクラウドサービスにアクセスできる「3 Screens and a Cloud」だ。「技術革新によって、ITの導入や使い方が大きく変わろうとしている。だからといってPCや携帯電話、テレビの重要性が失われたり、ましてや世の中がシンクライアント型の端末に一気に移行するということではない。こうした認識のもと、当社はWindows AzureやSQL Azureを中心に、より洗練されたクラウドサービスを展開していく」(バルマー氏)。
さ らに、音声解析や自然言語解析技術の重要性についても言及し、「デバイス間の違いを埋めてイノベーションを具現化するには、これら“ナチュラルユーザーインタフェース”が不可欠になる」と続けた。
クラウドへの本気度を強調
クラウドへの取り組みにおいて、コンシューマ向けではグーグルなどに出遅れた感がある同社だが、「企業向けの分野に限っては必ずしもそうではない」(バルマー氏)と強調。「当社ほど企業向けクラウドに本気で取り組んでいるベンダーはいない。唯一の例外を挙げるなら、セールスフォース・ドットコムぐらいだ。Webメールやインスタントメッセンジャー(IM)機能を備える『Windows Live』をはじめとするビジネスコンポーネントにおいて、マイクロソフトは世界トップの一角を占めると考えている」(同)。
クラウドに本腰を入れることによって、同社の既存ビジネスの在り方に影響を及ぼしたり、パートナーとの関係を再構築する必要が出てくることは認めながらも、「事業構造を大きく変革するチャンスだと捉えている。ことIT分野において、変化のないビジネスなどあり得ない」と述べ、首尾一貫してクラウドに本気である姿勢をアピールした。
併せてバルマー氏は、イノベーションを加速させるため、毎年95億ドルを研究開発につぎ込んでいることを明らかにした。「世界のあらゆる会社を上回る規模だと自負している。Windows 7や検索エンジンのBingもこの投資の成果の1つだ」(バルマー氏)。
同日の開催となったCIO(最高情報責任者)向けカンファレンス「Microsoft Executive Forum」では、Windows 7の企業導入の最新状況を明らかにした。会場では日本法人の樋口泰行社長が講演し、228社のユーザー企業がWindows 7の早期導入を検討していると表明。アステラス製薬が2010年までに世界各国の拠点の2万台におよぶPCを「Windows 7 Enterprise」に切り換えるのをはじめ、リコーや日本興亜損害保険、ヤマト運輸、日本たばこ産業などが導入の意向だという。