その昔に在籍していた編集部で、米Virtual Ink社の「mimio」という製品を使っていました。簡単に言うと、ホワイトボードへの書き込みをPCに取り込む装置です。
準備は、両端に超音波センサーを備えた60センチほどのバーをボード面の端に吸盤で取り付けるだけ。専用マーカー(市販マーカーを専用ケースに収納)には、筆圧がかかると先端のスイッチがオンになって超音波を発する機構が備わっています。
これで文字や絵を書くと、バーが三角測量の要領でペンの位置を特定。マーカーの筆跡が一連のトレース情報として記録される仕組みです。このバーと、専用ソフトをインストールしたPCをUSBケーブルで接続しておくと、マーカーによる書き込みがPCのモニター上にデジタルデータとしてリアルタイムに取り込まれます。
その編集部では、特集の構成やタイトルを決める際などに、スタッフが集まってmimioでアイデアを書き出して検討。決定に至ると、そのmimioのファイルを議事録としてメール添付で送るといった運用をしていました。
筆致の力強さや二重線による取り消しなど、書いたイメージそのままの記録は、現場でのやり取りを思い起こさせてくれる効用がありました。ちなみに、mimioは今なお、米Newell Rubbermaid傘下でリリースされています(国内ではOTTO扱い)。
そして今、私はmimioの仕組みをぐっとコンパクトにまとめたような個人向けデジタルペン「airpen MINI」(ぺんてる)を使っています。ノートの片隅に消しゴム大の受信部を取り付け専用ボールペンで書き込むと、その筆跡イメージが受信部の内蔵メモリーに記録されるのです。
もちろん、後でPCに取り込むことも簡単です。取材ではA5サイズのリーズリーフにメモを取るのが長年のスタイル。これが1年もすると相当の量になり、いつも保管場所に悩まされます。ならば、取材の現場でデジタル化してしまおうと考えたのが購入のきっかけです。airpenで記録したデータに取材日時や相手、テーマといったタグを入力しておけば、後で検索するのも手間取りません。
机上にあるスキャナScanSnap(PFU)で取材メモをデジタル化する方法も考えましたが、airpenを使ってみると思わぬ効果がありました。「字が丁寧になる」のです。airpenに付属するソフトにはOCR機能も備わるものの、その認識精度は決して高くありません。
それでも使い続けているうちにOCRの“癖”が分かってきて、無意識のうちに「認識しやすい字体」で書く習慣が身に付きました。暗号文字とまで言われた私の走り書きが少しはマシになってきた背景には、こんなカラクリがあったのです。
[変更履歴]写真およびリンクを追加しました(2010/02/16 18:40)
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