セールスフォース・ドットコムは米国時間の2010年2月3日、同社が提供するクラウド基盤である「Force.com」にBPM(業務プロセス管理)機能を追加。有償版のユーザー向けに、月額50ドルで提供を開始したことを明らかにした。
クラウド基盤の改良
BPM機能の名称は「Visual Process Manager」。これは、営業やサポートにおける一連の業務プロセスをForce.com上で簡単に設計・実行するためのツールで、次の4つのコンポーネントから成る。(1)画面上のアイコンをマウスでドラッグ&ドロップし、線で結ぶだけで業務プロセス図を作成できる「Process Designer」、(2)現場の担当者が顧客とやりとりする際などのガイダンスを作成する「Process Wizard Builder」、(3)設計したプロセスをテストするための「Process Simulator」、(4)プロセスをForce.com上で実行するための「Real-time Process Engine」である。同社が2009年に買収したInfor-mavores社の技術をベースに開発した。
Force.comの大幅な機能強化は、2010年に入ってすでに2回め。1月に発表した最新リリース「Spring'10」においては、Force.com上でAdobe Flash Builderを使ったリッチクライアントアプリケーションの開発・配布や、同社CRM製品のリッチクライアント化を可能にした。このほか、ユーザーが自社の顧客向けのWebサイトをForce.com上で構築・運用する機能も実装済みである。
アプリケーションの改良
セールスフォース・ドットコムは、クラウド基盤だけでなくCRM製品のバージョンアップにも余念がない。Spring'10では、営業担当者向けの「Sales Cloud 2」、サポート担当者向けの「Service Cloud 2」も機能強化した。
Sales Cloud 2には、数クリックで見積書を簡単に作成し、PDF形式で顧客に送信。見積もり内容を変更した場合、それをワンクリックで商談データに反映できる「Quote Sync」と呼ぶ機能を追加。既存の売上予測やサプライチェーンシステムなどを連携させ、売上レポートをリアルタイムで更新することも可能だ。
Service Cloud 2には、サポート業務の効率を向上させるために2つの仕掛けを用意した。1つは、顧客の契約内容やサービスレベル、サービス進捗状況を管理する機能。これにより、サポート担当者は、顧客ごとにどのようなサービスを提供すべきか画面を見ながら判断できる。もう1つは、「Answers」。これは、顧客の質問に対してサポート担当者や他の顧客が回答するコミュニティをService Cloud上に開設。サポートにかかるコストを低減させるための機能である。
このほか、全ユーザーにモバイル機能を開放したことも大きな強化ポイントだ。これまでも、Sales CloudやService Cloudを携帯電話やノートPCなどのモバイル環境で利用できる機能はあったが、5ユーザー以下の契約の場合は利用できなかった。
今後のビジネス展望
こうした頻繁なバージョンアップを強みに、セールスフォース・ドットコムはユーザー数を着々と増やしている。日本法人の宇陀栄次社長は「特に、大手企業による採用が相次いでいる。近日中に発表する導入事例を楽しみにしてほしい」としている。 (力竹)