ノベルは2010年6月25日、統合ID管理製品の最新版「Novell Identity Manager 4(IDM 4) Advanced Edition」を発表した。2010年9月に販売開始する。新たにセールスフォース・ドットコムやグーグルが提供するSaaSのIDを管理可能にするなど、クラウドコンピューティング関連機能を強化した。
IDM 4 Advanced Editionは、複数のシステムのIDの発行・変更・削除といったライフサイクルを統合管理する製品。「営業部スタッフであれば顧客関係管理システムのIDは付与するが、財務会計システムのIDは付与しない」といったポリシーを事前設定し、ポリシーに基づいて各システムのIDの発行や削除などを実行する。主要なOSやデータベース、ソフトウェア向けに、IDM4で管理可能にする「ドライバ」というモジュールを標準で用意しており、これを導入することで各システムで個別に管理していたIDを統合管理可能にする。
新たにセールスフォース・ドットコムの顧客関係管理SaaS「Salesforce CRM」や、グーグルのオフィススイートSaaS「Google Apps」のIDを管理可能にした。セールスフォースやグーグルが企業向けに提供する、管理者向けのIDライフサイクル管理コンソールのAPIを利用する。今後は日本IBMの情報共有SaaS「IBM LotusLive」や日本オラクルの顧客関係管理(CRM)SaaS「CRM On Demand」といったSaaSも対象にする予定。
併せて管理対象のサーバー数を拡大し、1つのドライバで1000台のサーバーを統合管理可能にした。これは数多くのサーバーを擁するクラウドサービス事業者向けの機能拡張だ。「IDM4をユーザー企業が導入すれば、自社システムと事業者の提供するSaaSのIDを統合管理できるようになる。事業者が導入すれば、自社のIaaSやPaaS向けのIDの統合管理や、統合ID管理機能のサービスとしての提供が可能になる」(営業本部 SEグループ シニアマネージャーの山田 昌透氏)。
基本機能の強化も図った。例えば、ポリシー連携機能の強化。IDM 4でポリシーを設定したロール(役割)と管理対象システムのロールを関連づけ、一方のロールに関するポリシーの変更をもう一方に反映する機能「Role Mapping Administrator」の対象システムを拡大。従来はSAPジャパンのERPパッケージ「SAP ERP」だけだったのを、Javaアプリケーションからデータベースに接続する標準仕様であるJDBCや、CSVをはじめとする区切りテキスト(Delimited Text)ファイルを利用するものを除いたシステムで利用可能にした。
ドライバの種類の拡充も図った。マイクロソフトの情報共有システム「Microsoft SharePoint」や、日本オラクルの統合業務(ERP)パッケージ「Oracle E-Business Suite」やミドルウェア群「Oracle Fusion Middleware」などの専用ドライバを用意した。今後はドライバのSDKを他ベンダーに個別提供することで管理可能なシステムを増やす。
同日、2010年6月1日に国内でも日本オラクルへの統合が完了したサン・マイクロシステムズの統合ID管理製品を利用するユーザー企業向けに、IDM 4への移行優待プログラムを発表した。サンの統合ID管理製品である「Sun Identity Manager」のユーザー企業は、ライセンスを支払うことなく、保守費用のみでIDM 4に交換できる。ノベル製品のトレーニングやデータ移行用の簡易ツールの提供も予定している。
IDM 4の価格は、1ユーザー6000円(税別)から。TISや日立ソフトウェアエンジニアリングなどの販売パートナーを通して販売する。クラウド関連機能などを除いたIDM 4の機能限定版も、2011年初頭に提供する。