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『銃・病原菌・鉄(上・下)』─ソニーグローバルソリューションズの李成蹊氏が選ぶ1冊

2010年10月28日(木)IT Leaders編集部

様々な部門のユーザーと接するIT担当者は、異なる分野におけるニーズを理解するため、柔らかい頭を要求されます。私にとって読書は、いろいろな考え方に触れて視野を広げるための手段。休日の早朝、家族が起きる前の静かな部屋で1人本を読むひとときを大切にしています。蔵書の5割は歴史物かな。傑出した人物がどのように人と接したのかに興味があるんですよ。

銃・病原菌・鉄(上・下)銃・病原菌・鉄(上・下)
ジャレド・ダイヤモンド 著、倉骨 彰 訳
ISBN:978-4794210050
草思社
各1995円

様々な部門のユーザーと接するIT担当者は、異なる分野におけるニーズを理解するため、柔らかい頭を要求されます。私にとって読書は、いろいろな考え方に触れて視野を広げるための手段。休日の早朝、家族が起きる前の静かな部屋で1人本を読むひとときを大切にしています。蔵書の5割は歴史物かな。傑出した人物がどのように人と接したのかに興味があるんですよ。

人への興味の延長から、人類史を扱った書籍もよく手にします。まずは、このジャンルから1冊紹介しましょう。

現在、地球上には多種多様な社会や文化が存在します。でも、それらのスタートラインは同じだったはず。原始にさかのぼれば、人類はみな狩猟採集生活を送っていた。ではなぜ人類は、地域によってこれほど異なる発展をしてきたのか。これは、人類史における究極の謎です。「銃・病原菌・鉄」は、この謎を生物学や考古学、文化人類学などの研究成果を駆使して解明する意欲作です。

ユーラシア大陸は、農耕や畜産に有利な地相を備えています。東西に長いため、全域の気候はそう変わらないからです。一方、アメリカやアフリカ大陸は南北に長いですよね。このため、気候や気温の差が激しく、農耕や畜産の技術は伝播しにくかったんです。

こうした違いが、その後の発展形態に大きく影響した。つまり、文明の違いや格差は、人種や民族の優劣でなく、それぞれの地域・環境に適応するための選択の結果だった。著者はそう結論づけます。データを集め、様々な学問を援用しつつ、仮説を実証するプロセスは壮大の一言。その主張の根底にある、偏りのない人類愛に感動しました。

免疫の意味論」は、自己と非自己を認識する免疫系のメカニズムを解明することで、疾病だけでなく様々な生命の営みを論じた1冊です。免疫系は自身の存在そのものを目的とし、自ら生成、多様化、組織化します。著者はこれを、「スーパーシステム」という概念で説明します。人とは何か、生命とは何かを考えさせられました。同じ著者の「生命の意味論」もおすすめです。こちらは、スーパーシステムの概念を都市や国家、企業などに拡張。人間社会について広く考察しています。

ビジネス書からも1冊。マネジメントを考える際、とても参考になるのは「プロフェッショナルの条件」です。

マネジメントに、カリスマ性や特別な資質は必要ない。著者はそう述べます。目標を決めて優先順位をつけ、達成指標を設定する。メンバー1人ひとりの強みを生かし、個々の弱みは組織力でカバーする。地位や特権ではなく、こうした仕事こそがマネジメントの本質だという主張には説得力があります。

イノベーションの原理についても言及しています。イノベーションのほとんどは、天才の働きやひらめきではなく、目的意識に基づき体系化された取り組みと理論的分析によって生まれる。この指摘には、大いに力づけられました。というのも、当社は数年前に「SSM(システムソリューションメソドロジー)」と呼ぶ開発方法論を導入し、プロジェクトマネジメントの標準化を図っているところなんですよ。同書を読んで、この取り組みの意義を再認識しました。

免疫の意味論

多田富雄著
ISBN:978-4791752430
青土社
2310円

プロフェッショナルの条件
P・F・ドラッカー著、上田惇生訳
ISBN:978-4478300596
ダイヤモンド社
1890円

 

李成蹊氏
李 成蹊(り・せいけい)
ソニーグローバルソリューションズ プロジェクト推進部門 ワークスタイルIT改革推進部門 部門長
ソフトウェア業界でオブジェクト指向やRDB、AI技術を応用したプラント故障診断など、各種商用アプリ開発に従事した後、1989年9月にソニー入社。日本初のVideo On Demandシステム構築リーダーをはじめ、商品企画や設計、システム構築部隊の統括職を歴任し、現職。プロジェクトマネジメント強化とQCD順守の核となる各種方法論の推進・定着と合わせて、ITを活用したワークスタイル改革推進をリードしている。
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