様々な部門のユーザーと接するIT担当者は、異なる分野におけるニーズを理解するため、柔らかい頭を要求されます。私にとって読書は、いろいろな考え方に触れて視野を広げるための手段。休日の早朝、家族が起きる前の静かな部屋で1人本を読むひとときを大切にしています。蔵書の5割は歴史物かな。傑出した人物がどのように人と接したのかに興味があるんですよ。
人への興味の延長から、人類史を扱った書籍もよく手にします。まずは、このジャンルから1冊紹介しましょう。
現在、地球上には多種多様な社会や文化が存在します。でも、それらのスタートラインは同じだったはず。原始にさかのぼれば、人類はみな狩猟採集生活を送っていた。ではなぜ人類は、地域によってこれほど異なる発展をしてきたのか。これは、人類史における究極の謎です。「銃・病原菌・鉄」は、この謎を生物学や考古学、文化人類学などの研究成果を駆使して解明する意欲作です。
ユーラシア大陸は、農耕や畜産に有利な地相を備えています。東西に長いため、全域の気候はそう変わらないからです。一方、アメリカやアフリカ大陸は南北に長いですよね。このため、気候や気温の差が激しく、農耕や畜産の技術は伝播しにくかったんです。
こうした違いが、その後の発展形態に大きく影響した。つまり、文明の違いや格差は、人種や民族の優劣でなく、それぞれの地域・環境に適応するための選択の結果だった。著者はそう結論づけます。データを集め、様々な学問を援用しつつ、仮説を実証するプロセスは壮大の一言。その主張の根底にある、偏りのない人類愛に感動しました。
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