割賦販売法の改正が話題になっており、提携教育ローンに及ぼす影響を心配する大学や学生がいることが報じられていた。それが現実のことになってしまった。今年になって、りそなホールディングス傘下の銀行が提携教育ローンの新規受付を中止するという新聞報道があったのだ(2010年8月18日読売新聞)。
割賦販売法の改正は、消費者保護を目的として2009年12月1日に施行された。悪質な業者から消費者を保護するため、特定商取引法と併せて適用範囲が拡大され、加盟店の調査義務や契約取り消しの適用拡大、過剰なクレジット利用の防止、番号情報保護のための刑事罰適用などが、改正内容に盛り込まれた。これ自体は何ら問題があるわけではなく、多重債務の防止や悪徳業者から消費者を保護するための法整備である。
ではなぜ、消費者のための提携教育ローンが中止に追い込まれてしまうのだろうか?
改正割賦販売法が成立した時に心配されていた提携教育ローンへの影響は、総量規制だった。先に改正強化された貸金業法が、年収の三分の一を限度とする借入額限度を定めたのと同じ総量規制のことである。新たに“包括支払可能見込額調査義務”が導入され、細かな条件による算出式で計算される。教育ローンも例外ではない。総量規制によって、貸したくても貸せないという事態が懸念されたのである。しかし記事によると、そうではなかった。
過大なシステムコストがかかる?
提携教育ローンは、銀行や信販会社が大学や専門学校などと提携。学校側を窓口として通常の教育ローンより低利で融資を提供する制度である。景気停滞によって年収増が見込めない中で、家計に占める教育費の割合は増加し、学費問題で退学する事例も増えていると聞く。そのような家庭が頼りにする教育資金調達方法の1つが、低利で借りられる提携教育ローンだった。
総量規制から借入額が制限されることを心配していた消費者は、しかし、意外なところから影響を受けることになった。改正割賦販売法によって銀行の提携ローンが改正割販法の規制対象になり、同時に銀行のシステム改訂の問題へと波及したことである。
規制対象になると、銀行は同法を所管する経済産業省に登録し、立ち入り検査を受ける必要が生じる。信用情報機関にローン残高を定期的に報告する必要も生じ、そういったことに対応する新たなシステム構築に相応の投資が必要になる。事業の中止はそれらを避けるための選択と思われるのだ。地方銀行にも提携教育ローンの撤退が広がっているという。
法律が変わると、いろいろなシステムに影響する。法制度変更はつねに企業内のシステムに改訂を要求する。社内の制度変更でも同様に大なり小なりのシステム改訂が必要になる。これらの費用は定常的に発生するので、企業では保守費として予算計上しておくことが多い。情報システムが企業のインフラになった現状では、ルールの変更は全てがシステムコストに反映されると言ってもいい。しかしながら、ルール改正において、そのことが意識されることはほとんどない。
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