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[ザ・プロジェクト]

SAPから国産へと基幹系を全面移行、慣れ親しんだ情報系もクラウドへ─国際航業ホールディングス

2012年2月15日(水)川上 潤司(IT Leaders編集部)

1990年代末、SAP R/3のビッグバン型(複数機能一斉)導入で名を馳せた国際航業。13年を経て、それを富士通のGLOVIAなどに全面的に移行した。背景には、どんな理由と経緯があったのか。いっさいの遅れなく全システムの本格稼働を果たした2人のプロジェクト責任者に話を聞いた。 聞き手は本誌編集長・田口 潤 Photo:陶山 勉

米村 貢一 氏
米村貢一氏
国際航業ホールディングス 取締役管理本部長
1993年6月、国際航業に入社。主に財務、経営企画に従事し、2010年4月に国際航業ホールディングスの取締役管理本部長に就任。総務・人事・経理・財務を統括している

 

米村 貢一 氏
小山規見氏
国際航業ホールディングス IT統括室長 兼 情報センター長
1981年4月に国際航業に入社。主に生産部門での購買・業務・収益管理などの職務に従事し、2010年9月から国際航業ホールディングスIT統括室長として、国際航業グループの基幹システム系のマネージメントを担当している

 

─ 国際航業は独SAPのERPパッケージ「R/3」をビッグバン導入した先駆的なユーザーとして、大いに名前を上げました。

米村: 確かに1998年にフルモジュールを導入した当時は、国内初と言われていたかも知れません。

─ しかし2011年、まったく別のERP製品に切り替えて全面刷新した。10年以上使ってきて業務に馴染んでいたと思いますが、どうして刷新することになったのですか。

米村: SAP R/3のサポート期限切れが迫っていたのがきっかけです。3.Xから4.6に一度バージョンアップしてからずっと使い続けていました。

─ 4.6ですか。さすがに古いので「バージョンアップしてほしい」とSAPの担当者から話が持ち込まれた?

米村: ええ。それでバージョンアップ費用を見積もったら、もうビックリです。

─ そんなに高かった?

米村: こんなにかかるなら、そろそろ見切りを付けようかと思いました。(笑)

─ 保守サポート契約はしていたわけですよね。

米村: もちろんです。

─ となると新版のライセンス料はかからないはずですが。

小山: そうですが、カスタマイズ部分がかなりあったので、バージョンアップといっても新規導入に近い費用がかかるという見積もりだったんですよ。そもそも10年前のR/3を熟知している技術者がベンダー側に残っているのだろうかという心配もありました。

米村: 仮にバージョンアップしても保守サポート費はかかりますから、将来にわたって重い負担を抱えることになります。

─ そんなに高いのですか?

米村: 高い…。交渉はしたんですけどね(笑)。

─ というと?

米村: ご存じの通り、当社とは付き合いが長いですから、SAPジャパンも重視して本社に掛け合ってくれました。同様な悩みを抱えているユーザーも少なくないので、日本の担当者には「つなぎとめたい」という意向があったみたいです。しかし、本社は応じるつもりはないとの回答でした。

─ それならSAPにこだわらず、新たな業務パッケージを探してみようと。

米村: ええ。2000年以前はともかく、最近は製品の選択肢が豊富です。SAPに固執する必要はありませんし、むしろ、もっと身の丈に合った製品を探すべきだということで、代替システムの検討を始めました(本誌注:同社の連結売上高は2012年3月期で548億4700万円の見通し)。2009年のことです。

インフォアやNECなど5社のパッケージを検討

─ どんなERP製品を検討したのですか。

小山: 外資系では日本オラクルと日本インフォアの2社。国産は富士通、NEC、オービックの3社です。システム要件を満たせるかどうか各社に質問状を送り、戻ってきた回答を点数化しました。

─ 国際航業ならではの要件はありましたか?

小山: それほど特殊なものはありませんが、当社は工事進行基準に基づく会計処理を取り入れているので、これは必須要件の1つでした。

─ プロジェクトの進ちょくに応じて原価や収益を計上する、建設業やソフトウェア産業などで一般的な会計処理ですね。

小山: ええ。そういった機能面や費用面を総合的に判断して、最終的にオラクルと富士通に絞り込みました。オラクルは「JD Edwards」、富士通は「WebSERVE smart」と「GLOVIA smart」を組み合わせた提案です。

─ 回答に差はありましたか? 質問状形式だと、どのベンダーも「できる」と回答して、そんなに差が出ないことも多いと聞きますが。

小山: それが、そうでもなかったんです。R/3を長らく使い込んできたのが知られているせいか、各社とも正直ベースでしたよ(笑)。

─ ERPの経験が豊富なユーザー企業だから、ベンダーも下手なことを言えない(笑)。ただ、いずれの製品も機能を満たして最終選考に残ったわけですから、そこからが難しい。

米村: 最後はシステムを実際に利用する社員の意見を参考にしました。日常的にシステムを操作するのは彼らですからね。経営陣はコスト面から製品を判断することはできますが、使い勝手に関しては社員の意見を尊重しないと。

─ 具体的には?

小山: それほど凝ったことを実施したわけではなく、デモや初期画面などを見せて第1印象でどう感じたかをヒアリングするといったイメージです。

最後は富士通の提案を採用“姿勢”が決め手の1つに

─ それで利用者の評価は一致した?

米村: いえ、割れたんです(笑)。ヘビーユーザーの意見は従来のシステムと設計思想が似ているオラクル製品に寄る。標準的な機能を使うユーザーは画面の分かりやすさなどから富士通製品を評価するという状況でした。

─ 悩ましいですね。

米村: かなり迷いました。2011年4月のカットオーバーを目指していたので、ベンダーからは2010年2月までに決めてもらわないと間に合わないと言われていました。でも「もう少し待ってほしい」とお願いして判断を引き延ばしました。

─ 直感的には、設計思想が比較的近いオラクルのほうが、現場の混乱を避けるうえで安心感がありそうです。

米村: おっしゃる通り。ところが、システムを変えるのであれば、まったく新しいものにしたほうが良いのではないかという意見もある。結果的に、3月下旬にオラクルと富士通にお願いして最終プレゼンを実施し、全会一致で富士通の提案を採用しました。

─ え? 何が決め手に。

米村: 顔が見えていたのが大きかったかもしれません。開発を担当する富士通システムソリューションズ(Fsol)のシステムエンジニアが、契約前の提案段階からずっと一緒に説明に来ていたのです。そこで「あなたが最後まで面倒をみてくれるんですよね」と約束してもらえたんです。実際、システム稼働後の現在も付き合っています。

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