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5700件のデータ消失事故はなぜ起きたのか、ファーストサーバの事故の経緯と背景を追う

2012年8月7日(火)

ファーストサーバ 未曾有の“システム災害”と言っていいだろう。レンタルサーバー事業者であるファーストサーバが2012年6月20日に引き起こした、データ消失事故のことである。「稼働率100%保証」を謳う同社のレンタルサーバーを使っているのは、企業、個人などを合わせ約5万件。その1割に相当する約5700件が蓄積してきたデータが消失した。約8割が企業であり、中にはデータ消失が事業継続に直結するEC事業者も含まれる。

データ消失ゆえに事態は深刻

ひと口にデータを消失したと言っても、中身は多岐にわたる。Webコンテンツや電子メールはもちろん、顧客情報や取引先への訪問予定にいたる様々なデータを失った。例えば、ファーストサーバはサイボウズのグループウェア「Office 9」をASPの形態で提供しており、ユーザーは149社ある。このほかに推定で250社が、パッケージ版をレンタルサーバーで運用していた。そうした企業はスケジュールや各種予約など日常業務の遂行に必要な情報はもちろん、Office 9のタイムカードやワークフローなどの機能を踏まえると、社員の給与計算や所得税の源泉に欠かせない出退勤情報、未決の稟議なども管理していたと見られる。

同じくASPサービスの「EC-CUBEクラウドサーバ」を使っていた企業は、商品や在庫、顧客の情報をはじめ、受注案件ごとの決済や配送のステータスにいたるまでデータを丸ごと失った。結果、ネット通販事業の停止は言うまでもなく、顧客対応さえままならない状況に置かれている。

問われる事業者、業界の姿勢

もっとも契約者が自らバックアップをとっていれば、被害は軽減されるはず。現実にファーストサーバの「レンタルサーバサービス利用契約約款」には、システムの過負荷や不具合によるデータの破損や紛失に対して、「一切の責任を負わない」と記されている。この点はどうだったのか。

約款の一方で、同社は「稼働率100%保証」、「業界最高水準SLA」を前面に押し出してきた(図1)。これらは「データが消えない」ことを確約するものではないが、そう思わせる効果があることは確かだろう。ASPサービスを紹介するWebページでも、「データのバックアップ/リストア(復旧)機能を標準で提供。お客様作業不要」と明記されている(図2)。特にシステム専任担当者がいないか、いても兼任が多い中小企業において、運用負担を軽減できるメリットは大きい。そう考えると、自社でバックアップをとっていた企業は多くないはずだ。

図1 「稼働率100%保証」「業界最高水準SLA」を前面に押し出したサービスを展開してきた
図1 「稼働率100%保証」「業界最高水準SLA」を前面に押し出したサービスを展開してきた
図2 同社のサービス紹介ページには、利用者によるバックアップやリストア作業が不要と読める説明も
図2 同社のサービス紹介ページには、利用者によるバックアップやリストア作業が不要と読める説明も

最後に、今回の事故から我々は何を学ぶべきか?まず必要なのは、データのバックアップ、あるいはそれ以前のシステムの可用性に関して、最終責任はユーザーにあることの再認識だろう。今日の企業にとって情報システム、とりわけデータは生命線。他社に委ねるのではなく、自社で管理する姿勢が必須だ。

一方、ある大手サービス事業者の責任者は「サービスを提供する業界として、自主規制を検討するべきかも知れない」と語る。自由競争は重要だが、だからといって「稼働率100%保証」といったうたい文句を放置するのは問題だという意見だ。

もう一つ、業界としての支援体制も検討すべきだろう。約5600件もの被害となると、当事者であるファーストサーバができることには限りがある。サービス事業者やインターネット関連団体、情報サービス団体などによる、何らかの支援行動や提言が必要だ。被害に遭った企業では、事態は収束どころか現在も続いている。問題をファーストサーバと被害企業だけの間に留めてしまえば、再び同じ“災害”が起きても不思議ではない。 (田口、栗原、緒方)

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5700件のデータ消失事故はなぜ起きたのか、ファーストサーバの事故の経緯と背景を追う [ 2/2 ] ファーストサーバ 未曾有の“システム災害”と言っていいだろう。レンタルサーバー事業者であるファーストサーバが2012年6月20日に引き起こした、データ消失事故のことである。「稼働率100%保証」を謳う同社のレンタルサーバーを使っているのは、企業、個人などを合わせ約5万件。その1割に相当する約5700件が蓄積してきたデータが消失した。約8割が企業であり、中にはデータ消失が事業継続に直結するEC事業者も含まれる。

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