内燃機関を積んだ自動車が発明されて約140年。ライト兄弟がエンジンを積んだ飛行機で初めて有人飛行して約120年。コンピュータは発明されて、およそ60年が経つ。いまや自動車も航空機も、ほとんどが後発のコンピュータで制御されている。例えば研究開発が進む先進安全自動車(ASV)には、衝突を緩和したり防止したりするブレーキ制御装置が搭載される。航空機のコクピットの計器類は、センサーとコンピュータの塊である。
そこにあるのは膨大な組込みソフトウェアであり、それを実行する中央処理装置(CPU)は、発熱などの問題によって単体の性能向上が行き詰っても打破する技術(マルチコア技術など)が生まれ、進化が止まらない。その結果、コンピュータはあらゆる分野に浸透。組み込みシステムでも、ビジネスシステムでも、あるいは個人の嗜好としてのゲームやカメラ、音楽などにしても、ソフトウェアが生き物のようにそれらを変身させる。
その敷衍(ふえん)性がITへの夢と希望を醸し出している。一般市民を宇宙へ旅立させ、人間型ロボットが当たり前のように人を介護する時代もくるだろう。45年ほど前の映画「2001年宇宙の旅」が、あたかも人類の行きつく先を示唆しているかのようでもある。しかしその夢と希望という“魔法”の中に“魔性”が潜んでいるのもまた、ITなのだ。
魔法はITそのものの力
ITの魔法性はどこにあるのか? それは組み込み系や通信系、エンターテインメント系の製品やサービスの中で容易に見つけることができる。組み込みソフトウェアによって次々に改良されて出てくる新製品は、人々をわくわくさせる。魅力的な製品を市場に送り続ける米アップルが時価総額世界一の企業になれたのは、それがあってこそだ。
通信の分野でもインターネットを使って想像もつかないほどの情報を入手し、どの国に住む友人とも連絡できるようになった。ゲームにしても、映画のCGにしても、バーチャルな世界をあたかもリアルに見せることで人々を魅了してしまう。これがITの魔法の部分である。
●Next:ITの魔法がなぜエンタープライズ系システムに及ばないのか
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