DevOpsの実現においては、アプリケーション実行環境の可搬性(ポータビリティ)や相互運用性(インターオペラビリティ)が重要な意味を持つ。それらを実現するPaaS(Platform as a Servise)の標準仕様である「TOSCA」の第1版が2013年3月にリリースされた。TOSCAを通して、DevOpsを支えるプラットフォームの内側を覗いてみる。
2013年3月、PaaS(Platform as a Service)に関わる重要な標準仕様となる「TOSCA (Topology and Orchestration Specification for Cloud Applications:発音は、プッチーニの有名なオペラ「トスカ」と同じ)」のVersion 1.0がリリースされた。リリースしたのは、オープンスタンダードの開発・普及を目指す国際的な非営利コンソーシアムの「OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)」だ。OASISは、「AMQP(Advanced Message Queuing Protocol)」や「SAML(Security Assertion Markup Language)」「WSBPEL(Web Services Business Process Execution Language)」といった標準を定めている。
TOSCAのゴールは、クラウド・コンピューティングの一形態であるPaaSの機能をクラウド・ベンダー間で標準化し、ユーザーが構築したアプリケーション実行環境をどのクラウドでも利用できるようにすることである。ではなぜ、DevOpsにとってPaaSが重要なのであろうか。
クラウド・コンピューティング・サービス(以下クラウド)をサービスレイヤーで分類すると、下位からIaaS (Infrastructure as a Service)、PaaS、SaaS(Software as a Service)となる。以下では、TOSCAによるPaaSの特徴をIaaSと比較しながら説明する。
単体のIaaSに対しPaaSは全体
IaaSでは、サーバー環境の「イメージ」をIaaSの管理サーバーが読み込み、プロビジョニング(調達)を実行する。ここでいうイメージとは、仮想マシン(VM:Virtual Machine)の元になる情報、例えば仮想ディスクのフォーマットや内容、仮想マシンのスペックを定義したファイルだ。このイメージが展開されることで、VMのインスタンスが短時間に作成される(図1)。ソフトウェアなどを構成済みのサーバーを「アプライアンス」と呼ぶことから、イメージは「仮想アプライアンス」とも呼ぶ。イメージをIaaS間で共有するための標準フォーマットとしては、「OVF(Open Virtualization Format)」が広く利用されている。
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