EMCジャパンは2014年1月29日、2014年の事業方針について説明会を開催した。市場(=企業IT巡る動向)のとらえ方は、ユーザー企業にも参考になる内容だ。
説明会においてEMCジャパンの山野修社長は、企業ITが今“第3のプラットフォーム”への転換を迫られていることを強調した。
メインフレーム/オフコンと専用ターミナルで構成する初期コンピューティングモデルが第1世代、PCの台頭やネットワーク(LAN/インターネット)技術の進歩でクライアント/サーバー・モデルが中核になったのが第2世代。それに続くのが、モバイル、ソーシャル、クラウド、ビッグデータといった革新的トレンドの組み合わせで創出される第3のプラットフォームである。リサーチ会社、IDCが提起したメッセージとして見聞きした方も多いだろう。
第3のプラットフォーム上では数百万のアプリケーションがアプリケーションが動き、膨大なユーザーが主にモバイルデバイスから利用する。すでにコンシューマ分野では「第3」が賑やかなのは周知の通りで、企業ITもそちらにシフトせらずを得ない─。感覚的には分かるが、うまく腑に落ちないという向きもありそうだ。
山野社長は1つのエピソードを紹介した。この1月、EMCコーポレーションの幹部陣が世界中から本社に集結したイベント。ゲスト講師として、クリントン政権下でアル・ゴア副大統領のスピーチライターを務めたダニエル・ピンク氏が招かれた。今の時代というものを再確認する意味を込めて、氏が投げかけた質問は「この会場に30歳の人はいますか?」──。
“おじさん”が圧倒的多数の中、1人の女性社員が手を挙げた。いくつかの質問のやり取りから彼女のバックグラウンドやライフスタイルが示された。携帯電話を持ったのもネットを使うようなったのも中学生の時。ソーシャルデビューは大学から。友人にメッセージを投げかければ、ソーシャル経由ですぐに返信がくるのが当たり前であり、調べごとがあればネット検索で最初の答にわずか30秒ほどでたどり着く。
彼女は特例ではなく、デジタルネイティブ世代の感覚は同じである。──ピンク氏が訴えたのは、ニーズからレスポンスに至る(許容できる)時間感覚が、以前とまったく違っているということ。ビジネスの担い手となり、一方では顧客層の中核にもなってくるのが、その世代である。彼ら、彼女らの常識的感覚や行動様式に沿ったビジネスを組み立てなければ、相手にされないというわけだ。
それに向けて企業が取り組もうとした時、ビジネスを支えるITとして、当該世代が日常的に使っている第3のプラットフォームを強く意識せざるをえなくなる。話が遠回りしたが、テクノロジーサイドから企業を支援するEMCもまた、第3─へのシフトを強力に後押しすることが不可欠として2014年の事業方針につながってくる。