ビジネスのスピードに呼応すべく、開発チームと運用チームが密に連携し合うことで、迅速なアプリケーションの開発と継続的なインテグレーションを目指すDevOps。両者の高い壁を破るこの方法論は、開発者が社員の半数以上を占めるような先進テクノロジー企業だけのものなのでしょうか。先ごろCA Technologiesが発表したDevOps戦略を取り上げて、“エンタープライズDevOps”の要件や可能性について考えてみます。
IT業界もしくはユーザー企業のIT活用に長く携わっている方であれば、CA Technologiesと聞いて、多くが運用管理やセキュリティ、あるいはメインフレーム向けのソフトウェア製品を思い浮かべるのではないでしょうか(実は私もそうでした)。ですが近年のCAは、これらの分野と同等、もしくはそれ以上に、アプリケーション・デリバリーやAPM(Application Performance Management)といったアプリケーションの開発ライフサイクルにまつわる分野に力を注いでいます。
とりわけ、ここ1、2年の注目トレンドであるDevOpsについては、同社の製品ポートフォリオの3本柱の1本に位置づけられていて、エンタープライズITでのDevOpsを推し進めたい同社の強い意志が伝わってきます(他の2本はマネジメントクラウドとセキュリティ)。
エンタープライズにおけるDevOpsの要件
アプリケーションの迅速な開発と継続的なデリバリーという、アジャイル開発コミュニティ発祥の、先端的な開発者たちの主導で形成されたDevOpsの方法論が、(概して重厚長大で、部門間の壁が高く、保守的な)エンタープライズITのアプリケーション開発にうまくフィットするのかどうか――「エンタープライズDevOps」を考えるうえでよくなされるこの議論に、CAがどのようにこたえているのかは気になるところです。
エンタープライズにおけるDevOpsの要件について、CA日本法人でDevOps担当ディレクターを務める渡辺隆氏は、「開発と運用の間には、プロジェクトの進行スピードと品質に大きな影響を及ぼす、たくさんの作業がある」と指摘し、次のように説明しています。
「例えば、他のアプリケーションとの統合や、テストで要求される精度のレベル、数年前とはまるで異なるトランザクション負荷など、アプリケーションの開発が終わった後、運用担当者に渡すまでの間に解決すべきことが非常に多いのがエンタープライズの環境だ。加えて、テストも含めた開発の環境を構築するためのコストや時間なども、見えにくい部分であるものの見逃すことができない要件である」
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渡辺氏の挙げる、開発と運用の間のフェーズにある、スピードと品質にかかわる解決が必要な各種の作業を自動化によってこなしてくれるのが、6月5日より国内投入が始まった「CA LISA Release Automation 5.0」です。「DevOpsの取り組みを支援する継続的デリバリーのためのリリース自動化ツール」と表された同ツールは、2012年に提供済みの製品群と共に、「CA LISA」製品シリーズを構成しています。既存の製品には、同社が“サービス仮想化”ツールと呼ぶ「CA LISA Service Virtualization」と、統合テスト支援ツールの「CA LISA Test」があります。
前者の“サービス仮想化”は、ついインフラの仮想化を連想してしまいますが、かなりユニークな開発テストのための技術で、これから開発しようとするアプリケーションが、既存のアプリケーションやミドルウェア、サービスと連携・統合されたとき、実際にどんな挙動・振る舞いを起こすかを事前にシミュレートする機能を提供します。これによって、「運用フェーズへの移行時に起こりうる不具合やパフォーマンスボトルネックの芽を事前に摘むことができ、開発期間短縮、品質向上、コスト削減に寄与する」(同社 ビジネス・テクノロジー・アーキテクト 西野寛史氏)という効果が得られます。
今回、新たに投入されたCA LISA Release Automationが、DevOpsの要である継続的デリバリーを実現すべくアプリケーションリリースの自動化を担うことで、CA LISAシリーズは、アプリケーション自体の開発の後、性能テストを経て、アプリケーションを運用に渡すまでのフェーズを網羅することになります。なお、2014年6月より、CA LISAシリーズには「ca Devcenter」という新しいサブブランド名が与えられています。これは名のごとく、DevOpsのDev側をカバーする製品群を表しており、同他の領域の製品群もそれぞれ「ca Opscenter」「ca Intellcenter」「ca Securecenter」というサブブランド名の下でまとめられています。
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