IT市場調査会社のノークリサーチは2014年8月18日、同社が定点観測調査として年4回実施している「中堅・中小市場におけるIT投資動向調査」の同年7月分結果を発表した。結果からは、依然として厳しい業績の中でも、多くの中堅・中小企業がIT活用の必要性を理解し、投資意欲が上昇しつつあることがうかがえる。
図4は、IT投資DIの変化を業種別にプロットしたものである。図1にあるように、2014年4月と2014年7月を比較した場合、中堅・中小企業全体でのIT投資DIは1.1ポイント改善している。だが、業種別にみると、組立製造業、建設業、卸売業、IT関連サービス業では上昇、加工製造業、流通業、小売業、サービス業では下落となっており、業種によって傾向が大きく異なっていることがわかる。
ノークリサーチは、どの業種にどのようなITソリューションを提示すべきかを検討する際の指標を示すため、業種ごとのIT投資DIの変化とその要因の分析を行っている。図5はその一例で、小売業に対して「2014年7月以降のIT投資額が2014年4~6月と比べて減る理由」を尋ねた結果をプロットしたものだ。
グラフが示すように、経常利益DIがマイナスであることを反映して、「売上が低迷し、IT投資費用を捻出できない」が突出して多く挙げられる結果となった。その次に多く挙げられたのが、「Windows XPのサポート終了対策が終わったので、今はIT投資を控える」と「物価や金利の上昇に備えて投資は控えておきたい」といった項目だ。
この結果について岩上氏は、「『Windows XPからの移行で負担を強いられたばかりなので、IT投資は控える必要がある。また今の時点で取り組まなければならない項目はないが、将来的には必要となりそうだ。だが、その際には物価や金利が上がりそうなので、投資資金には余裕を持っておきたい』といった意向が垣間見える結果であるとコメント。そのうえで、ITベンダーに向けて以下のような提言を行っている。
「小売業のこうした状況を打破するためには『今、IT投資をすべき理由』を提示する必要がある。その理由は当然ながら業種によって大きく異なってくる。小売業であれば、『人件費は今後もしばらく高止まりが予想されるため、少ない人材でも業務が回るような仕組みをITを駆使して構築する』などの提案が考えられる」(同氏)
同調査のダイジェスト版はノークリサーチのWebサイトで公開されている。また、バックナンバーを含むレポートの完全版も同社のWebサイトから購入することができる。