[海外動向]

海外で活発化するIoTの標準化活動、製造/家電に強い日本企業の参加は今ひとつ

2015年4月30日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)への関心が高まる一方だ。米IT関連調査会社のガートナーによれば、IoTの経済規模は9兆ドルに迫ると試算されている。そのIoTを取り巻く状況を見てみると、2013年から2014年にかけて、米国を中心にIoT関連団体や企業連合が相次いで設立されている。そこには、それぞれの思惑を秘めた半導体メーカーやネットワーク機器ベンダー、ITソリューションベンダー、産業機器メーカー、家電メーカーなどが名を連ねている。ただ残念ながら、日本企業の名前は数えるほどしか登場しない。

 OICは、将来的には産業分野にも目を向ける予定だが、当面は家庭用機器やオフィス機器をインターネットでつなぐための標準仕様の策定に注力する。Allseen Alliance対抗の象徴的と言えるのが、Intelが開発したIoTフレームワーク「IoTivity」である。Alljoyn同様のオープンソースのIoTフレームワークで、こちらもLinux Foundationとの協業プロジェクトとして開発を進める予定だ。

 OICの中核メンバーとなるるダイアモンドメンバーは、Intelのほか、Cisco、米GE Software、Samsung、台湾の半導体メーカーであるMediaTekの5社。設立メンバーのDellやAtmelは、仕様策定などに主導的立場で関われるプラチナメンバーに名を連ねている。2015年4月時点では70社あまりの企業/団体が参加しているが、日本からの参加はない。

無線のメッシュネットワークの標準化も本格化

 OILが誕生した2014年7月には、無線ネットワークプロトコルにフォーカスした「Thread Group」も設立されている。メッシュネットワークプロトコル「Thread」の導入促進が目的だ。Thread製品向け認証プログラムを策定するなど、普及に向けたスピーディーな動きを見せている。

 Threadは、IPv6およびZigBeeとして知られる、低コスト、低消費電力の802.15.4チップセットをベースに開発されたプロトコル。到達距離が短い近距離無線を搭載したデバイス同士が連携して、データをバケツリレー方式で目的地まで送り届ける。従来の無線ネットワークで必要となるアクセスポイントや基地局が不要なため、低コストの無線ネットワークが構築できるというメリットがある。

 Thread Groupは、韓国のSamsungや英国の大手半導体メーカーであるARM、産業用ファンメーカーの米Bog Ass Fans、組み込みプロセサメーカーの米Freescale、半導体メーカーの米Silicon Laboratories、監視カメラやセキュリティロックなどの防犯機器メーカーである米Yale Security、サーモスタッドなどのスマートデバイスメーカーであるNestが創設メンバーとして参加している。Nestは米Googleが買収した企業として有名だ。現在の会員数は100社を越えており、日本からは村田製作所とダイキンが参加している。

 このThread Groupと同じメッシュネットワークの規格「IP500」の普及を目的とした団体に「IP500 Alliance」がある。IoTを使ったものづくり改革を目指す「Industry 4.0」で盛り上がるドイツに拠点を置く欧州連合的な団体だ。ただIP500 Allianceの設立は2007年で、ビルオートメーション、今風に言えばスマートビルのための標準化を進めてきた。IoT/Industry 4.0の盛り上がりで、再注目された標準の1つとも言える。

 IP500 Allianceの参加企業は、独BOSCH、独Siemens、スウェーデンのAssa Abloy、米Honeywellなど。2015年2月には日本にも活動拠点を開設しており、オムロンや豊田通商が参加している。

IoTでは先行するとされる日本企業の標準化への参加は少ない

 今回紹介した団体は、IoT関連の標準化の一部。通信やセキュリティなどIoTに絡む技術分野は多用だし、すべてが全く新規に企画されるものでもないからだ。IP500 Allianceのように、以前から活動してきた団体がIoTに焦点を当て直し、活動を活発化させるケースも増えてくるだろう。

 また、多くのITベンダーが複数の団体に参加しているのも特徴だ。IoTの標準化に向けた動きは、まだ始まったばかりであり、将来的にどの分野がIoT特有の技術分野なのか、そしてどこがデファクトを取るのかは、まったく予測がつかないのが現状だからだ。

 ただ気になるのは、日本企業のIoT関連団体への参加が極めて少ない点だ。日本には、IoTの主戦場になりそうな製造業や家電メーカーが数多くある。IoTの重要要素であるセンサーに強みを持つ企業も、ごろごろしている。実際、ガートナーの調査によると、既にIoTを手掛けている企業の割合は、世界全体よりも日本の方が高いという結果が出ている。その数は19%にも及ぶという。

 つまり、多くの日本企業は、国際標準の行方を見守っているというよりは、オリジナルな仕様で、自社や既存のパートナー企業との間でいち早くIoTを導入してきたと考えられる。将来的には、かつての携帯電話同様に、IoTにおいても「ガラパゴス化」してしまう可能性は否定できない。

 日本にも、IoTで世界と渡り合えるだけの潜在的なモチベーションを持つ企業が多数存在していることは間違いがない。であれば、あらゆるモノがつながることでメリットが発揮されるIoTにおいて、国際標準化に発言力を持たないということは大きなデメリットになるだろう。

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