これまで10回にわたり、マイグレーションを実施する際のポイントについて説明してきた。マイグレーションは「ITコストの適正化」と「企業競争力の維持・継承」を実現するためにレガシーな環境から脱却するための手法である。今回は、そのまとめとして、マイグレーション後の“さらなる一手”について考慮すべき点を考えてみる。
企業ITが抱える課題は、「より競争力を高める戦略的なシステム投資を望んでいるが、IT投資の多くの部分をバックログの解消やシステム維持に費やし、新たな投資コストを捻出できない」ことである。システム面でも「システムの老朽化やITガバナンスの強化が必要だが、現行システムの機能維持が伴い簡単には踏み切れない」。これらの課題を解決するための手法が、本連載のテーマであるマイグレーションだ。
マイグレーションでは、IT投資の大部分を費やしていた運用・維持コストの大幅な削減を図る。削減できたコストを活用することで、IT投資の全体金額を変えることなく、戦略的なシステム投資に振り向けることが可能になる。市場競争力を高めるための業務の効率化や、スピードアップおよび付加価値の向上、リスク対策、セキュリティ対策などだ。当然ながら現行機能も維持できる。
一方、マイグレーションを実施すると当初計画より開発コストが2倍、3倍と膨れ上がるケースが少なくない。これは、マイグレーションのテスト段階になって問題点を発見し、改修後の再テストで新たな問題を発見されるためだ。しかも発見された問題点が他のアプリケーションにも内在し、改修と再テストが発生する。結果として、再テストのスパイラルに陥り開発コストを増加させていく。
このようなスパイラルに陥ることなく、マイグレーションを成功させるために考慮すべき点が、本連載で解説した8つのポイントだった。
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