これまで、マイグレーションを実施する際に考慮すべき8つのポイントについて説明してきた。しかし、モダナイゼーションを成功に導くためには、移行段階だけではなく、移行後の運用・保守についても考える必要がある。今回は、マイグレーション後に考慮すべき点について考えてみる。
マイグレーションの手法を用いることで、既存アプリケーションを再利用しながら維持コストが安価なプラットフォームへ移行できる。業務アプリケーションは従来の機能を保持しており、そのメンテナンスについて変化は少ない。業務アプリケーションを最大限に再利用できるよう、新たな設計および開発を極力避けるのが、マイグレーションだからだ。
変わらないアプリケーション保守
業務アプリケーションを再利用するマイグレーションでは、アプリケーション自体は変わらない。従って、アプリケーション保守で実施する影響調査、設計、開発、テストといった一連の作業手順も変わることはほとんどない。新しいプラットフォームや開発環境に慣れるまではむしろ、生産性の面では低下するであろう。
ただそれでは、マイグレーションで安価なプラットフォームに移行でき、運用を集約しコストの圧縮ができても、コスト比率で最も大きな割合を占めるアプリケーション保守の改善が図れない。「アプリケーションの保守の生産性が従来と変わらなければ、目的としては達成できた」との考え方もある。だが、モダナイゼーションとしては敢えてアプリケーション保守にも切り込みたいところだ。
マイグレーションの対象になるシステムは、開発された時期が10年前、20年前ということがざらにある。長期間に渡って使用されているシステムでは「ドキュメントのメンテナンスが追いついていない」や「ドキュメント自体が存在しない」というケースが多い。そのため、保守担当者の経験に依存し、スキルトランスファーが阻まれ、開発要員のローテーションの阻害要因になる。
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 3
- 次へ >
- 【第11回】マイグレーションに“終り”はない(2015/11/24)
- 【第9回】最も手間が掛かる帳票のマイグレーション(2015/09/28)
- 【第8回】現行システムの凍結期間は最短化する必要がある(2015/08/24)
- 【第7回】マイグレーション工数の3〜5割を費やすテスト(2015/07/27)
- 【第6回】難易度が最も高いデータベースのマイグレーション(2015/06/22)