ビッグデータやIoT(Internet of Things)など、新たなITサービスは様々な業界に地殻変動をもたらしている。グローバル企業の中には、この流れをビジネスチャンスに変えるために大胆な構造改革に乗り出しているところも多い。グローバルでビジネスを展開する日本企業にとっても、見て見ぬふりをすることのできない状況になりつつある。自らもグローバルでビジネス展開を行っている日立製作所は、日立グループが現在行っている構造改革プロジェクトのノウハウを活用した製造業向け構造改革支援サービスの提供を、2105年12月1日に開始した。日立コンサルティングと共同で、上流コンサルティングからソリューション・サービスまでを提供する。
ビッグデータやIoTなど、現在注目を集めているITサービスの多くは、ビジネスそのものに直結する。時にビジネスモデルの転換を促し、企業に新たな収益構造をもたらす。グローバルでは、米General Electricや独Siemensを筆頭に、IoTを足掛かりに大胆な構造改革に取り組み成果を上げている企業が増加している。
企業が構造改革を実行するためには、経営者による大胆な決断が必要となるが、国内での実績は少なく、成功事例に欠けるのが難点となっている。そこで、自らが構造改革に乗り出し毎年一定の成果を上げている日立が、その経験を活用した構造改革の支援サービス「Transformation支援サービス」を提供することにした。
Transformation支援サービスの土台となっているのが、日立グループが現在進行中の構造改革プロジェクト「Hitachi Smart Transformation Project」(スマトラ)だ。
日立はリーマンショック後の2009年3月期に、製造業として過去最大となる7873億円の赤字を計上している。事業ポートフォリオの見直しにより2010年度で黒字転換を果たし、次なる成長に向けて2011年度にスマトラを立ち上げた。
スマトラが掲げるのは「コスト構造改革」「CCC改革」「業務基盤の整備」の3つ。「CCC」とは、「Cash Conversion Cycle(仕入から販売に伴う現金回収までの日数)」のことで、「在庫回転日数+売掛債権回転日数-仕入債務回転日数」で算出される。
コスト構造改革では、年間1000億円超のコスト削減を継続的に行っていくこと、SG&A(販売費および一般管理費)比率の適正化を図ることを目指した。CCC改革では、キャッシュ創出、オペレーションへの変革、運転効率の最大化に向けた事業ごとのリードタイム短縮を行った。事業基盤の整備としては、社会イノベーション事業を支える組織・業務・ITの構築を行った。
2011年にスマトラへの取り組みを初めて、これまでの累計コスト削減額は4200億円にのぼる。2014年度は、間接コストが1500億円、生産コストと直接材コストで1700億円の計3200億円を削減したという。2015年度にはさらに1000億円のコスト削減を達成する見込みとなっており、着実に成果を上げているといえる(写真1)。
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このスマトラでの実績、ノウハウをベースに開始したのがTransformation支援サービスだ。日立では構造改革を「全体改革計画策定」「改革構想具体化」「改革実行」という3つのフェーズに別け、5つのサービスメニューを用意した(写真2)。
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全体改革計画策定フェースでは「簡易アセスメント」「全体改革計画策定支援コンサルティングサービス」を提供する。改革構想具体化フェーズでは「個別テーマ改革支援コンサルティングサービス」を、改革実行フェースでは、スマトラで活用したソリューションサービスを提供する。また、すべてのフェースを通して「プロジェクトマネジメント支援サービス」を提供する。
改革実行フェースで提供される主なソリューションサービスとしては、IoT技術とクラウドを活用した「Hitachi Total Supply Chain Mnagement Solution/IoT」、スマトラで構築した基盤をベースとした「グローバル調達ロジスティクスサービス」、「グローバル会計ソリューション」などが上げられる。